2021年3月10日、明治安田生命J1リーグ第3節が開催された。等々力陸上競技場では、川崎フロンターレと徳島ヴォルティスが対戦。川崎Fが即位奪回と圧倒的なスキルで昇格組の徳島を2-0で破り、開幕4連勝を飾った。

上写真=L・ダミアンの2得点で川崎Fが徳島を破った(写真◎小山真司)

■2021年3月10日 明治安田生命J1リーグ第3節(@等々力陸/観衆4,,853人)
川崎F 2-0 徳島
得点:(川)レアンドロ・ダミアン2

・川崎Fメンバー:GKチョン・ソンリョン、DF山根視来、ジェジエウ、谷口彰悟、旗手怜央、MFジョアン・シミッチ(64分:塚川孝輝)、田中碧、脇坂泰斗(64分:橘田健人)、FW家長昭博(80分:遠野大弥)、レアンドロ・ダミアン(64分:小林悠)、三笘薫(80分:長谷川竜也)

・徳島メンバー:GK上福元直人、DF岸本武流(83分:藤田征也)、鈴木大誠、安部崇士、吹ヶ徳喜(71分:ジエゴ)、MF藤田譲瑠チマ(83分:小西雄大)、岩尾憲、浜下瑛、渡井理己、藤原志龍(71分:川上エドオジョン智慧)、垣田裕暉(64分:河田篤秀)

川崎Fの強さの源泉は枯れない

 ボールへの執着は、昨年以上だ。相手にプレッシャーをかける場面のアプローチは単なる「寄せる」ではなく、「奪う」。攻撃から守備に切り替わった瞬間、ピッチには瞬く間に何人ものハンターが出現する。王者は、圧倒的な攻撃力を誇りながら、守備面の積み上げにも余念がない。徳島戦でも高い強度とハンターぶりを見せつけた。

 後方からもボールをしっかりつなぐ相手に対してチームとして「取りどころ」を共有し、機を見極めて一気に狩りに行く。先制点は、L・ダミアンのプレスから始まった。12分、シミッチが三笘とのワンツーで左サイドを抜け出そうとしたが、三笘のリターンを受けた直後に相手のスライディングに遭ってボールがこぼれた。きびすを返してそのボールを追ったのがL・ダミアンだ。左コーナー付近で相手CB安部が先に追いつくが、なおもプレッシャーをかけると、徳島の前方へのパスを三笘がカット。ボックス内でフリーになっていたL・ダミアンがパスを受け、迷わず右足を振り抜いてネットを揺らした。

 そして2点目。今度は奪ったのも決めたのも、L・ダミアンだった。42分、ジェジエウのロングフィードが合わず、相手GK上福元に回収された。そこですぐに攻守を切り替え、GKからのパスを制限しに向かった。ピックアップに降りてきた藤田へとボールをつながれたが、L・ダミアンはここで諦めなかった。藤田にプレス。バックパスを受けた上福元にも連続プレス。安部にボールを逃がされると、今度は安部と藤田がパス交換している間に一気に距離を詰め、藤田、そして安部にプレッシャーをかけてボール奪った。そこからの判断も早い。前に出ていたGKの位置を確認しつつ、ボックスの外から迷わず右足を一振り。見事にシュートを決めた。

 徹頭徹尾ハードワークするのは、今の川崎Fでは当たり前だ。ただ、今季から副キャプテンを務めるナンバー9のプレーがこの日はスイッチになり、チームのベクトルを前向きにした。「昨季もそうでしたが、今季はよりプレーが際立っていると思います。あそこでプレスに行くというのはエネルギーを与えてくれる」と鬼木達監督もそのプレーを称えた。

 結局、L・ダミアンの2ゴールのあと、スコアは動かず、試合は決着。これで川崎Fは開幕から無傷の4連勝となった。チームが掲げる3ゴール以上を記録することはできなかったものの、前半から飛ばしてゴールを奪い、選手交代をしながら、強度と攻めの姿勢を保って、きっちり勝ち点3を手に入れた。

「欲を言えば、3点目、4点目がほしかった。それは最後の精度の部分(の問題)でしたが、そういうところまで行けるようにと思っています」

 勝利してなお、指揮官の要求は高かった。選手もまた、同じ。だから川崎Fの強さの源泉は枯れないのだろう。王者は、試合のたびに、さらなる高みへと向かう姿を見せている。

取材◎佐藤 景 写真◎小山真司