3月10日にJ1第3節が行われ、柏レイソルは名古屋グランパスを迎えた。序盤からフィジカルコンタクトの多いタフなゲームとなったが、後半にワンチャンスをものにしたのが名古屋。柏も1点を激しく追いかけたが、名古屋が逃げ切った。

上写真=ゴールを決めた稲垣祥(中)を相馬勇紀(左)と柿谷曜一朗が祝う。名古屋が厳しい試合を勝ちきった(写真◎J.LEAGUE)

■2021年3月10日 明治安田生命J1リーグ第3節(@三協F柏/観衆2,877人)
柏 0-1 名古屋
得点:(名)稲垣祥

「実現しようとすることを信じて戦う」

「小さなチャンス」ならどちらにもあった。8分に名古屋グランパスは稲垣祥がミドルシュート、直後に柿谷曜一朗が相手のバックパスミスからゴールに迫り、14分には柏レイソルの呉屋大翔が中央から鋭く狙った。名古屋は38分にも、柿谷の右からの低いセンタリングに逆サイドから相馬勇紀が突っ込んで、何とかボールに触りはした。

 でも、どちらも何かが少しずつかみ合わなかった。

 キックオフから激しいコンタクトが随所に見られ、どちらも4-2-3-1のフォーメーションで堅陣を築いたから、どうしてもゴール前に入り込む手前で止められてしまう。柏のネルシーニョ監督も名古屋のマッシモ・フィッカデンティ監督もグラウンドコンディションが万全ではないことも理由に挙げつつ、小さなミスも積み重なり、0-0のまま折り返す。

 一度だけ、名古屋にかみ合ったシーンがあった。58分、中盤で米本拓司がボールを回収して右のオープンスペースへ。マテウスが走り込んで左足に持ち替えてクロスを送ると、柿谷曜一朗が力強くヘディングシュートを放った。柏のGKキム・スンギュが素晴らしいセーブでストップし、こぼれ球を稲垣がシュート、またもやキム・スンギュが止めたものの、そのボールが大南拓磨に当たって入ってしまった(記録は稲垣のゴール)。

 ここからは指揮官の腕の見せどころ。ネルシーニョ監督は62分に仲間隼斗とクリスティアーノと攻撃的な選手を同時に投入して前への圧力を高め、攻撃を改善、ゴールに迫っていった。フィッカデンティ監督は68分にボランチの木本恭生を入れて中盤を引き締め、同時に送り込んだ山崎凌吾を最前線に配してボールキープで時間をつくった。ネルシーニョ監督が71分に細谷真大をトップに入れてフレッシュさを加えると、フィッカデンティ監督は84分にまたもボランチに長澤和輝を起用、先に入っていた木本を最終ラインに下げて5バックにしてさらにゴール前を固めた。

 結局、このまま名古屋が逃げ切って、1-0の勝利。2018年と20年もこのアウェーゲームでは1-0で勝利を奪い取っており、またもやタフなゲームをものにした。

 これで名古屋は3連勝。フィッカデンティ監督は難しい試合での勝ち点3を大いに評価した。

「プレーの難しいグラウンドコンディションで、勢いは柏にあって中盤を増やしましたが、最後はゴール前を守るように割りきって5枚を並べました。柏も気持ちが入っていて、あのグラウンド状態だったので気持ちの争いになると思っていて、そこは常に強く求めているものですから、戦いきったと評価できると思います」

 ネルシーニョ監督は敗戦に悔しさを見せつつも、後半に改善できたことについては納得の表情。

「結果こそ求めていたものではありませんでしたが、後半に入ってからバランスを取り戻していい守備からいい攻撃を仕掛けるサイクルを見ることはできました。実現しようとすることを信じて戦うしかないので、選手にはそれを伝えました」

現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE