横浜F・マリノスは2021年3月3日、JリーグYBCルヴァンカップGS第1節でベガルタ仙台と対戦し、1-0で勝利した。決勝につながるボールを送ったのは「新境地」を開拓した岩田智輝。新フォーメーションの中で自らも新たな可能性を示した。

上写真=仙台戦で中盤の底に入り、プレーした横浜FMの岩田智輝(写真◎J.LEAGUE)

■2021年3月3日 YBCルヴァンカップ第1節(@ニッパツ/観衆3,851人)
 横浜FM 1-0 仙台
 得点者:(横)オナイウ阿道

Yの底でスムーズにプレー

 YOKOHAMAのチームらしく、この日の中盤には「Y」が描かれていた。左に樺山諒乃介、右に水沼宏太が張り出し、中央では渡辺皓太がスペースとボールを求めて動き回る。この布陣で、中盤の底を1人で預かったのが、新加入の岩田智輝だった。

 昨季まで所属した大分トリニータでは、主に3バックの一角を務めた。ボール扱いの技術と推進力も持ち合わせ、プレシーズンのトレーニングでも、3バックの右CBで起用されるケースが多かった。だが、J1開幕戦では4バックを採用。岩田は右サイドバックで開幕スタメンを飾り、そして、この日の試合では新たなタスクを託された。

 中盤の底でボールをはたいては動き、縦関係になった渡辺と時折ポジションを入れ替えながら、振り幅は小さいながら鋭いキックで低く速いボールを送って、サイドへ大きな展開も見せていた。
 
 16分には、ベガルタ仙台が敷いた3つのラインを斜めのグラウンダーでスパッと切り裂く。右に開いていた水沼が「余裕があった」と感謝して受けたボールは、オナイウ阿道に送られ、先制点につながった。

 岩田は「大分で後半ラスト10分くらいならあるけど、スタートでは初めて」と、ほぼぶっつけ本番で新しいポジションに挑戦した。大きな緊張が伴うかと思いきや、「すごく楽しかった」と笑顔。「シンプルにボールをはたき、真ん中で相手の攻撃をつぶすことだけを意識していた。ある程度できたかなと思う」と手応えを得た様子だ。

 今まで本格的にプレーしたことがないとは信じられないほど、堂に入った中盤でのプレーぶりだった。このポジションをこなすことで、「自分にもチームにもプラスになると思う。ある程度やれることを示せたかと思う」。最後まで消えない笑顔が、シン・イワタの大きな可能性を示していた。

取材◎杉山 孝