セレッソ大阪の追撃をかわす逆転弾。3月3日のJ1第11節で川崎フロンターレを勝利に導いたのは、またも三笘薫だった。軽やかなドリブルとワンツーのコンボで決めたが、それだけで終わるつもりはない。大久保嘉人から学べることがあった。

上写真=今季初ゴールが貴重な逆転弾。今季も三笘薫から目が離せない(写真◎小山真司)

■2021年3月3日 明治安田生命J1リーグ第11節(@等々力/観衆4,756人)
川崎F 3-2 C大阪
得点:(川)レアンドロ・ダミアン2、三笘薫
   (C)大久保嘉人2

「得点を決めないとメンバー争いに勝てない」

 その瞬間、「体が勝手に動いた」のだという。

 前半を1-2のビハインドで折り返し、後半開始すぐの47分にレアンドロ・ダミアンが決めて2-2。一気に逆転モードに入ったチームに、ゴールという実りをもたらしたのは、またもや三笘薫だ。

 左サイドで旗手怜央から預かると、ボールを持ち出して上半身のシェイクで一人外してペナルティーエリアの中へ。たまらずセレッソ大阪は3人が囲んでくる。その間を小さなパスで抜いた。レアンドロ・ダミアンが巧みなポストプレーで落としてくれる。

 右足のアウトサイドで優しく触れたその次の瞬間に、右足のインサイドでゴール右に流し込んでいた。キーパーのリズムを完全に崩したトラップ&フィニッシュの滑らかさ。この一連のスムーズなタッチが「感覚ですね。体が勝手に動いた」というのだ。

「前節、ああいう場面で決められなかったので、決まって良かった」と安心もしたが、「まだまだ」と続ける。

「失点に絡んでしまったので反省していますし、得点を決めないとなかなか次のメンバー争いに勝てないので、結果を出さないといけないと思っていました。決められたのは良かったけれど、改善しなければいけないポイントはあるんです」

 1試合3ゴールというチームのノルマと逆転を同時に決めてみせても、やはり表情を崩しはしない。

「クロスに対して入っていくことを求められていますが、まだまだだと思います」

 自慢のドリブルはこの日も何度も炸裂した。「うまくスピードでかわせれば1対1をつくれると思いました。ただ、後ろと横をもっと使いながらフリーになれればチャンスになるので、できるだけ高い位置からペナルティーエリアに入れればと思っています」と進化の途中だ。そこにもう一つ、新しい武器を身につけるつもりだ。右からのクロスに力強く入っていって決めるゴール。

 かつての川崎Fのエース、大久保嘉人がこの日、目の前で決めた2点目はまさに、右からのクロスに対してゴールに飛び込む迫力満点のプレーによるものだった。

 お手本は至るところにある。

取材◎平澤大輔 写真◎小山真司