2021年の明治安田生命J1リーグの開幕戦で、FC東京を迎えた浦和レッズでは大ベテランが一際輝いた。先発した阿部勇樹は守備の連係を司りつつ、今季チーム初のゴールも奪って「39歳の主役」になった。

上写真=はつらつとピッチを動き回った阿部勇樹がうれしい開幕弾!(写真◎小山真司)

■2021年2月27日 明治安田生命J1リーグ第1節(@埼スタ/観衆4,943人)
浦和 1-1 FC東京
得点:(浦)阿部勇樹
   (F)森重真人

「僕たちが楽しめば…」

 リカルド・ロドリゲス新監督に与えられたキャプテンの栄誉。阿部勇樹は背中で…いや、その右足でチームを引っ張った。

 FC東京との開幕戦。新チームのお披露目で阿部はボランチの一角として、キックオフから埼玉スタジアムのピッチに堂々と立った。昨年はケガのためにわずか3試合の出場で、先発は12月16日の川崎フロンターレ戦だけだった。それが今季は絶好調。17歳年下のルーキー、伊藤敦樹を隣に従えて、87分まではつらつとプレーした。しかも、74分には右CKのこぼれ球を右足で蹴り込んで先制したのだ。

「やっぱりサッカーって楽しいな、というのを感じながらプレーできたのは非常に大きかったですね。リカルド監督になって取り組んできたことが出せたシーンがたくさんあったので、サッカーって楽しいなという思いがプレーに表れたのかなと思います」

「FC東京対策として守備や攻撃でやってきたことがしっかり試合で出せたことが、やはり楽しいんです。監督がやりたいサッカーをそれぞれが理解して、出せたシーンが多くありました」

 準備がその効果を発揮する喜びは、何にも変えがたいのだろう。1997年にジェフユナイテッド市原のトップチームに登録されてから数えると25年目となるシーズン。その開幕戦にいきなりゴールを挙げたことももちろんだが、それ以上に新しいサッカーが形になっていく快感を取り込んで、「サッカーはやっぱり楽しい」という地平に達するのだ。

「僕たちが楽しめば見ている人にも楽しんでもらえると思います。だから、勝てなかったのが残念でした」

 86分にFC東京の森重真人に、こちらもセットプレーから決められて引き分けに終わった。悔やみきれないが、次に「新体制初勝利」をもぎ取れば、着実に成長している実感がさらに強い愉悦をもたらしてくれるだろう。

取材◎平澤大輔 写真◎小山真司