シーズンの始まりを告げるFUJI XEROX SUPER CUP 2021が2月20日、埼玉スタジアムで行われた。川崎フロンターレが終了間際のゴールでガンバ大阪を3-2で下し、昨季の絶対王者がまた進化した姿を見せた。

上写真=2021シーズンの幕開けを告げるゲームは川崎フロンターレに凱歌!(写真◎小山真司)

■2021年2月20日 FUJI XEROX SUPER CUP 2021(@埼玉スタジアム/観衆4,208人)
川崎フロンターレ 3-2 ガンバ大阪
得点:(川)三笘薫2、小林悠
   (ガ)矢島慎也、パトリック

「いまの段階で言えばすごく満足」

 王者の風格。川崎フロンターレは今年もJ1の主役になることは間違いない。

 2021シーズンの始まりを高らかに告げるファンファーレが鳴った。FUJI XEROX SUPER CUP 2021でガンバ大阪と戦った川崎Fが、3-2で勝利を手にした。前半はキックオフ直後こそミスから相手にボールを渡してしまったが、それ以降はほとんど独壇場。29分に田中碧のパスから三笘薫が豪快に突き刺して今季第1号をたたき込むと、3分後にも三笘が山根視来のミドルシュートをゴール直前で触ってコースを変える追加点。後半にG大阪に2点を許す苦しい展開となりながらも、試合終了直前の90+6分に小林悠が教科書通りにコースを突くきれいな弾道のシュートを送り込んで決着したのはさすがだった。

 圧倒的な強さを誇った昨年からの大きな変化は、ジョアン・シミッチの存在だろう。名古屋グランパスから加わって、川崎Fの代名詞である4-3-3システムで中盤のセンターに入った。ここは昨季、守田英正が入ってハイパフォーマンスを見せ、チームのすべてをハンドリングしていたポジション。守田が移籍した空白をシミッチが埋める形になった。

 シミッチの特徴はスペースを埋めていく運動量とシンプルなパスだろう。それぞれに大きな効果が見られた。真ん中のポジションにこだわらず、左右によく動いて、サイドバックを高い位置に押し出した。右の山根視来、左の旗手怜央はどちらも、インサイドハーフの田中碧や脇坂泰斗、ウイングの家長昭博や三笘薫と連係してサイドを割っていった。

 ボールローテーションの中継役にもなり、ほとんど無駄なくシンプルに周りを使っていくので、リズムが生まれる。G大阪がスライドして追いつこうとするスピードを上回るテンポでボールを走らせていった。

 64分に塚川孝輝にあとを譲ってピッチを去ったが、「川崎Fデビュー」は上々。立ち位置で味方の攻撃参加を後押しし、パスで小気味良いリズムを生み出し、自慢の攻撃サッカーをさらに攻撃的にするためのエンジンを組み込んだようなものだった。

「個人的なところで言えば、いま出せることを出し切って力になれたのではないかと思います。全体ではシーズンが始まったばかりで改善する部分、伸ばす部分はたくさんありますが、いまの段階で言えばすごく満足のいくプレーができました」

 シミッチの自己評価は及第点。鬼木達監督からは「攻守でバランスを取りながら積極的にプレーしてくれと言われた」そうで、「自分の中でこのプレーをしたいというよりは、要求されたことを意識して試合に入っていきました。求められたことはできたと思います」と振り返った。

 鬼木監督はそこからさらに高いレベルを要求していく。

「今日でいうとアンカーに入りましたが、どれだけボールを多く触ってコントロールできるかでした。そこは彼の特徴でもあるので、もっともっとボールに絡んでいってほしいと思います。ただ、練習が始まった当初と比べると良くなっていて、あとは本当に細かいところですけれど、ボールを受けたあとにもう1回受けられるシーンや、逆にボールに寄りすぎてというようなところはあるので、そこは修正しながらですね。本当に真面目な選手で、要求に応えようと一生懸命です」

 三笘もその左足を喜ぶ一人。

「シミッチはパスの精度が高いです。僕が裏に抜けたところを見てくれるし、左利きなので外に開いたときに裏へのボールや速い縦パスが入ってやりやすいです」

 右利きだった守田のときとはまた違ったタイミングやリズムをつかんで、異なるスタイルの攻撃が生まれそう。絶好調の18番をさらに生かすことができるという点でも、チームにとってシミッチ効果は大きい。

 攻撃的なサッカーに、さらに攻撃的なエッセンスを掛け合わせるニューパワー。川崎フロンターレはやっぱり今年も面白い。

現地取材◎平澤大輔 写真◎小山真司