上写真=神戸で3年目のシーズン。酒井高徳の存在感は増すばかりだ(写真◎VISSEL KOBE)
「ボランチもサイドハーフもウイングも」
2021年も酒井高徳がここにいることが心強い。監督交代、14位に低迷したJ1、最後にAFCチャンピオンズリーグでベスト4と出入りの激しいシーズンだった2020年も、この男がコアになってチームを走らせてきた。
そんな自分のことを「オールラウンダー」と分析している。
「与えられた場所でやるのはもちろんですけれど、ドイツではサイドバックだけではなくてボランチもサイドハーフもウイングもやりました。経験はあるので臨機応変に対応できる自信はあるんです。求められることを整理しながらやるのが大事で、チームのために何をするのか、そして結果にこだわって、どこでも出られる準備はできています。タフな時期や負傷などのタイミングがある中で、どうしても別のポジションに動かなければいけないこともあると思います。そういうときに穴埋めできるようにするのは、オールラウンダーとしての自分の強みの一つだとこれまで思ってやってきました」
チームのためならどこでもこなしてみせる。神戸を背負う選手の粋だ。
チームとしては、昨季の59失点という守備の混乱を解消することが大きなテーマの一つになっている。
「局面で守るのは一人ひとりの自己責任で、自分も含めて1対1でやられないことや中盤の球際で負けないこと、戻るべきところでしっかり戻ることといったように、失点減らすために自分ができることをしっかり突き詰めるのが大前提として大事です。そこにチームとしての守り方が加わって、よりいっそう堅くなる。戦術はあるけれどそれ以前に、一人ひとりが守備の意識を強く持てるようにならなければ」
デュエルに勝てなければピッチを去るほかないドイツでのタフな経験が言わせるのだろう。しかし、サッカーは守るだけで好転するものではない。
「攻撃も頭に入れながら守備をしたいですし、ボールを長く持って攻撃の時間が長くなれば守備の時間は短くなります。頭でっかちに守備、守備、守備、にならないで、攻撃の部分でボールを持つというところをしっかり頭に入れてやっていきたいと思います」
攻撃は最大の防御というわけで、それを実践できていた頃のイメージをもう一度思い起こしている。
「天皇杯で優勝したときなどは、取られたあとに切り替えて高い位置から奪って支配するサッカーができていたから、強さを感じられました。昨年はコロナの影響もあってなかなかそういうシーンが出てこなくて少し苦戦したところはありますけど、やっぱりそのベースができるとチームに勢いが出ます。いや、ベースというか、いまのサッカーでは必要不可欠なことですからね」
そうやって攻めていって、狙うは昨年超え。
「昨シーズンは6アシストと1ゴールがありましたが、その数字を超えるようにしたいですね。その数字を去年出せたなら、今年はもっと出せるはずで、そこを突き詰めていきます。振り返ってみて、最後の精度のところや攻撃に出ていく回数のことを踏まえて考えたら、どれもコンディションが良ければできることだったんです。昨年はコンディションが良くないのにそれだけできたということをポジティブに持っていって、今年はそれを上回るシーズンにしたいです」
心と体が整えば、より充実した1年になる。そんな実感が、たっぷりとある。