柏レイソルの「顔」といえば、大谷秀和。柏一筋で19シーズン目を迎えるボランチが、フレッシュな気持ちで新シーズンに向かっている。JリーグYBCルヴァンカップ決勝で敗れた悔しさに刺激を受けて、ますます向上心が湧き出している。

上写真=今年37歳になる柏の鉄人・大谷秀和は今年も健在だ(写真提供◎日立柏レイソル)

「次こそ自分たちが、という気持ちで戦いたい」

 キャンプも疲労のピークのようだ。それも、鉄人として鳴らす大谷秀和にとっては慣れたもので、笑顔と力強い言葉から充実感がにじみ出る。

「トレーニングの中でフィジカルの要素を持ちながらも、少しずつゲーム形式で人数を増やす状況が増えてきていますね。昨日は疲労のピークというか、元気がなかった一面もありましたけど、みんなモチベーション高く、監督の今年やろうとしていることにトライしています。改善すべき課題はあるけれど、新加入選手も大きなコートでやることで特徴をより把握できますし、順調にきていると思います」

 1月4日にJリーグYBCルヴァンカップ決勝を戦って、始動は2月3日だから、まだプレシーズンも序盤だが、開幕は2週間強と迫る。急ピッチで進めるチーム力アップの先頭に立っている。

 新シーズンを予見するとどうしても、昨季28ゴールのオルンガが抜けたことに焦点が当たってしまうが、今年37歳の御大は泰然自若。冷静にチーム全体を見渡して、何をすべきかを整理している。

「やろうとしているサッカーに大きく変化はないですね。ミカ(オルンガ)がいなくなって、あれだけの点を取れる、何もないところからゴールを生み出せる選手がいなくなれば、どこのチームでも痛いと思います。
 ミカの代わりはいないわけで、でも(呉屋)大翔もゴール取る能力はミカに負けなぐらい持っています。ただ、彼を生かすという戦い方よりは、昨年よりもていねいにボールを運びながら前進していくほうが大事なのかなと思っています。ミカはアバウトなボールでも何とかしてくれたけど、それよりもしっかりと主導権を握りながらボールを運んでいく場面を増やす必要があると思います」

「カウンターも点を取るための可能性の一つであって、それだけではダメですからね。課題はボールを持ったときの前進の仕方やアイディアで、複数の選手が絡むことが足りなかったところもあるので、向き合いながら改善するほうに向かっています。もちろん、ミカがいなくてもカウンターの鋭さは続けなければいけないし、どちらもできる準備をしています。簡単ではないのは全員が理解していますが、相手に脅威になるように進めていきたいと思います」

 ていねいさとアイディアがキーワードになりそうだ。オルンガはいなくても、柏には名前の出た呉屋のほかに江坂任というマルチタレントがいて、クリスティアーノ、仲間隼斗、瀬川祐輔、神谷優太、マテウス・サヴィオなどと個性派アタッカーを揃えている。その組み合わせによってケミストリーを起こし、さまざまなバリエーションの攻撃が生まれるはずだ。

 一方で守備面。まだ始動して間もないから細かい部分はこれからとしながらも、こちらは「メリハリ」がキーワード。

「始動して1週間でフィジカルがメーンでもあったので、新たに何かをというところまではいっていません。ただ、昨年からしっかりと人に強く行きつつも、ライン間でコンパクトにしてオーガナイズしながらというのは、ネルシーニョ監督も言っていることです。メリハリを持って守備することも強く言われています。まだ頭と体が一致していないちぐはぐな感じもありますが、そういう中でも相手を見ながらプレッシャーをかけることはできていると思います」

 まだまだ上を見続けているから、心も体もフレッシュだ。

「ルヴァンカップ決勝で久々にタイトルを争う場所に立ちました。サッカー選手である以上、その場所にい続けなければならないし、負けてしまったけれど、FC東京の選手が喜ぶ姿は目に焼きつけました。次こそ自分たちが、という気持ちで戦いたいとあの決勝のあと思いましたし、今年はボランチで新加入選手がいるので、切磋琢磨していい部分を吸収しながら、今年で37になる歳ですけど向上心を持ってやりたいと思います」

 鉄人はますます鉄人になる。