名古屋グランパスの沖縄キャンプもいよいよ終盤に差し掛かってきた。練習試合も2試合行って実戦モードに入っているが、新加入の齋藤学は、いまの段階ではゴールそのものよりも攻撃のイメージを共有していくことに注力している。

上写真=齋藤学はFC琉球との練習試合で2得点。しかし、ゴールそのものよりも過程を重視している(写真提供◎名古屋グランパス)

「この時期にどれだけ点が取れても…」

 名古屋グランパスの15日間の沖縄キャンプも、いよいよ残り3分の1。「話には聞いていましたけど、シーズンのはじめでこんなに走ることはなかったので、慣れるまでに時間がかかって」と齋藤学もついこぼした。しかし、そのおかげでコンディションは上々。

「ようやく戦術練習が増えてきて走りも少なくなってきましたけど、自分のパフォーマンスや体の具合は現時点ではいいんじゃないかな。ケガなくできているのがいまは一番ですし、開幕のときに100%である必要はないですからね」

 新チームに移籍してきても、その点で焦りはない。いまはじっくり。

「シーズンを通して活躍できる体づくりをしています。どこかの時点で100%になりますし、波はできると思うからいまはいい体ができればと思っています。期待していてください」

 最後の一言に順調な歩みがにじむ。

 キャンプでのもう一つの重要なミッションは、イメージを共有すること。練習試合では2月3日の大宮アルディージャ戦で4-3、6日のFC琉球戦で8-1と得点シーンが多く見られ、齋藤自身も琉球戦で2ゴールを記録している。

「この時期にどれだけ点が取れても、もちろんいいことではありますけど、それによってどうこうということはないですね。戦術や選手間でやろうとしていることが組み合わされていいゴールにつながった、という点ではいいことでした」

 つまりは、ゴールそのものよりも、ゴールを導いた過程に重心を置く考え方だ。

「イメージ共有もすごく大事で、それもチーム戦術の中で共有できたというのがいまの段階で一番いいこと。戦術の中でいろいろな形で点が取れたのがいいことなんです。誰と誰が組んだから生まれた、というイメージだと再現性がないですからね。チームとしてこの形であれば誰と誰がやってもできる、というのがベストであって、そういう点で大宮戦も琉球戦もいい形で取れているのがいいことだと思います」

 サッカーは即興性や意外性が好まれるスポーツであるのと同時に、いかに再現性を高めていくかでそのチームの骨格が決まってくる。舞台があってこそのサーカスだ。

「イメージの共有は全部でうまくいくことはないんです。同じシーンが2度と来ないのがサッカーという競技ですけど、それが来ることを信じて、合わなかったときの話とか、自分が動いてほしいことと相手がどう思っているのかの確認を、イメージの共有という点でちょっとでも合わせられればと思って話をしています」

 こうしてシェアしたイメージをアウトプットするのが、本番のピッチ。2月28日の開幕戦、アウェーのアビスパ福岡戦に向けて、さらに沖縄で仲間と感覚をすり合わせていく。