サガン鳥栖FW和田凌が、自身初挑戦となるJ1への適応と、恩返しの活躍を誓った。昨季はJ3で公式戦出場ゼロも、トライアウトを経てステップアップを果たし、新天地で自身の価値を証明しようという意欲に満ちている。

上写真=沖縄キャンプで練習に励む和田(写真◎サガン鳥栖)

「このままでは終われない」

「初日の練習で、止まった状態での技術は、それなりに頑張っていけると思いましたが、それを出すための次の準備、頭の準備とプレーの準備が自分には足りないと思いました。慣れて、向上していかなければいけない」

 沖縄キャンプ中のオンライン取材で、新天地での始動日をこう振り返った。「プレーとプレーの間、プレーをしていない時間の、頭の回転と次のプレーの準備がJ2、J3と比べてすごく早い。頭も体も、ずっと動かしていなければいけない」と語る言葉からは、驚きだけでなく、そこに身を置く充実感も伝わってくる。

 阪南大から2018年に当時J3のFC琉球に加入。1年目からリーグ戦22試合に出場して7得点を挙げる活躍を見せ、J3優勝・J2昇格に貢献した。翌19年途中に鹿児島ユナイテッドFCに完全移籍。クラブがJ3に降格した昨季も残留したが、本人が「コンディションは良く、ケガもなかった」と語る状態ながら、公式戦出場ゼロに終わった。

 シーズン終了後に契約満了となり、「このままでは終われない、サッカーを続けたい、という気持ちで」Jリーグ合同トライアウトに参加した。「まだ終わらないだろう、という反面、ここで何もなかったら終わりだなという気持ちもあった」という不安を感じながらも、多くのクラブが獲得に興味を示すプレーを披露。「すごくうれしい話をくれたクラブの方や、直接電話してきてくれて、話を聞いてくれた方もいた」中で、唯一のJ1クラブだった鳥栖を選び、「試合に出られず苦しい1年でしたが、しっかり積み上げてきたものをトライアウトという形で、いろいろなチームで見ていただき、カテゴリーを問わず声を掛けてくれた方がいた。積み上げてきてよかったと思った」と振り返る。

 もちろん、ここがゴールではない。「新しく、今までやってきた以上にやらなければいけないと分かっていますし、それは(始動からの)2、3週間で、肌で感じています。進化していかなければ、成長していかなければいけないと、すごく思う」との思いで戦力となり、チャンスを与えてくれた鳥栖への恩返しを誓う。

 もう一つ、「トライアウトを受けた僕が活躍することで、より多くの子どもたちに夢を与えられると思います。同じサッカー選手でも、僕のような選手がいるんだと、一つのモデルケースになれるような1年にしていきたい」との思いも抱く。J3での出場ゼロからJ1へとステップアップした物語の続きを、自身の活躍で紡いでいくつもりだ。