2021年、名古屋グランパスに集う猛者たちの一人が齋藤学だ。昨季、圧倒的な優勝を手にした川崎フロンターレを離れて、新しいチャレンジに向かっている。狙うは優勝ただ一つ。キレキレドリブラーの現在地とは。

上写真=新加入の齋藤学は、沖縄キャンプで体作りと名古屋のサッカーの体得に当てている(写真提供◎名古屋グランパス)

「前向きにどう生きていくかを考えられています」

「優勝したいです」

 チャンピオンチームである川崎フロンターレを離れ、齋藤学が名古屋グランパスに新天地を求めた理由は、これだ。

「個人的にというよりは、川崎から名古屋に来てこのチームで優勝したいということは、来てみてより思えました。きつい練習をして……経験したことないような走りの練習が多かったりするんですけど、そういう日々の練習はなかなかの強度の高さで、激しくいくときは激しいし、厳しく要求し合えているのはいいチームの証拠。このチームで優勝したいと日々、思えています」

 マッシモ・フィッカデンティ監督ならではのシビアなトレーニングに、神経が研ぎ澄まされていく。

「フロンターレやマリノスと倒さなければいけない相手はたくさんいますけど、立ち向かっていって強いグランパスにしたい。そういう中で僕も成長していければと思います」

 あえて古巣のクラブの名前を出すのは、覚悟の表れだ。2017年から20年のJ1チャンピオンを倒すことで、齋藤のプライドが立つ。

 新しく加わったこのドリブラーは、「古巣を叩いて名古屋で優勝」のために沖縄キャンプで何を求めていくのか。

「自分の特徴は分かりやすいですからね。仕掛けるプレーやドリブルしながらどうチームが回るかを考えたり立ち位置を取ったり、前向きにどう生きていくかを考えられています。監督が来てまだ3、4日だし、いま自分がいいプレーをできているかどうかよりも、体が動けているか、チームでのパスや対人の強度が上がっているか。それができていればいいと思っているので」

 焦りはない。シーズンを逆算して、いまは体の中にプレー強度と「マッシモ流」をじっくり染み込ませるための時間だと分かっている。

「細かい戦術のことを言っていいか分からないので難しいですが、名古屋は対戦相手としてやっていますし、マッシモが東京や鳥栖でやって来たものも見ています。大きなサッカーの違いはないですけど、ただオーソドックスな、しっかりと守備をするということはあります」

 守備への強い意識は川崎Fで意識づけされてきただけに、不安は少ないだろう。

「戦術練習ではすごく聞く時間が多いですけど、自分の中でプラスにとらえています」

 プレーの意図を事細かにピッチ上で説明するフィッカデンティ監督の言葉に、必死に耳を傾ける。

「戦術練習は代表でイタリア人のザック(アルベルト・ザッケローニ監督)とやって、それに近いですかね。しっかり止まってポジションの役割を説明した中で、ボールがどう動いたら選手はどう動くべきだと提示してくれます。そういうものをベースでつかみつつ、自分の特徴を出すことをやっていきたい。プレッシャーのかけ方や間合い、速さのところは自分で出していきたい」

 マテウス、相馬勇紀、前田直輝とハイクラスのサイドアタッカーを取り揃える名古屋にあって、齋藤も加わることで、タイトル獲得へ、そしてアジア制覇の夢もふくらむ。

「あと1カ月弱の開幕が待ち遠しいですね」

 齋藤にとっては、はやる気持ちをしっかり抑え込むことが、このキャンプで一番大変なことなのかもしれない。