故郷のクラブであるアビスパ福岡を自らの活躍で昇格させて、ヴィッセル神戸に戻ってきた。そして、今度はオリンピックという世界へ。増山朝陽はその目標を隠そうとはしない。攻守に格を上げたアタッカーが今度は神戸で走り回る番だ。

上写真=自慢のスプリント能力で、増山朝陽はオリンピック出場を狙っている(写真◎VISSEL KOBE)

「守備から攻撃までをつなげることができるように」

 アビスパ福岡からヴィッセル神戸への帰還は、オリンピックという舞台のためだという。

「(福岡へは)期限付き移籍で行っていましたし、ヴィッセルで活躍するほうがオリンピックのことを考えるとネームバリューが違います。イニエスタなど各国の代表選手がたくさんいるチームで得るものも多いし、そこで試合に出ることに意味があると思います。インパクトが残ると思うので、ヴィッセルで試合に出て、これまでできていたことや長所を伸ばしていって、J1の舞台でもしっかり増山朝陽という僕の名前を轟かせてオリンピックに出たいと思います」

 清々しいまでの宣言だ。タイトル獲得を狙うチームでもまれて、一気に世界の舞台へと飛び出すストーリーを描いている。

 2020年は福岡で36試合に出場してブレイク。5得点という結果ももちろんだが、攻守に振り切ったアグレッシブなプレーでJ1昇格の原動力になった。長谷部茂利監督に叩き込まれたセオリーが、増山を強くした。

「(外に)張っているだけじゃなくて中に入っての守備や、自分で取りどころを作ってアプローチにいくスピードと狩るところとか、1対1は負けないようになりましたし、そこから前に出ていくまで、守備から攻撃までをつなげることができるようになったのはプラスになりました」

 守備がベースにあるが、その先の攻撃に至るまでの連続性を植えつけられた。増山自慢の激しいスプリント能力がそれを実現させたのだ。

 福岡で手にした自信を、今度は神戸のピッチでお披露目だ。

「福岡のときには、逆サイドのサイドハーフがスライドして中盤まで戻ってスペースをケアしていたんですけど、それはアツさん(三浦淳寛監督)がいま練習で落とし込んでいるのと共通する部分です。僕はそれができるので褒められることが多いから続けていきたいですし、味方を動かすようにしゃべりながらやっているので、すごく楽しみな部分でもあります」

 攻撃面でもそのランで効果をもたらすつもりだ。

「背後への動き出しについては、シーズンを通して昨年のヴィッセルになかったかなと思うので、そこはアツさんも気にしていたところです。僕は裏に抜け出したり、飛び出していくのが好きなので、走って貢献できたらいいと思っています」

 世界へ飛び出すスプリンターが、神戸に新しい魅力を加えることになりそうだ。