昨シーズン限りでAC長野パルセイロを契約満了なった阿部伸行は昨年末にトライアウトに参加し、移籍先を探した。そして届いたのが、プロキャリアをスタートさせたFC東京からのオファーだった。新体制発表時のオンライン取材で、当時の心境と今季にかける思いを語った。

上写真=沖縄キャンプでトレーニングする阿部伸行(写真提供◎FC東京)

一番声をかけてほしいチームでした

 2010年以来となる11年ぶりの帰還は、本人いわく、「想像していなかったこと」だという。AC長野パルセイロとの契約満了し、昨年のクリスマスには移籍先を探して、トライアウトに参加していた。つまりはクラブからのオファーを待っていた状態。もちろん、FC東京は意中のクラブだが、よもや吉報が届くとは思っていなかった。

 阿部はFC東京U-18の出身だ。流経大を経て、07年FC東京に入団した。生まれ育ったクラブと言っていい。ただ、大学卒業後、4年間所属したが、プレー機会を得ることはできなかった。5年目の2011年に当時J2の湘南ベルマーレへ移籍。翌年からポジションをつかみ、J1昇格に貢献した。その後は15年にJ2北九州、17年にJ3長野と活躍の場を変えながら研さんを積んできた。そして、2020年シーズン限りで長野を退団し、FC東京への『復帰』が決まった。

「(話が来たときは)即決でした。トライアウトを年末に受けてオファー待っていましたが、一番声をかけてほしいチームからのオファーだったので、すぐに決めました」

 FC東京のGK陣のレベルの高さは承知している。しかし、飛び込むことに迷いはなかった。

「正直、(昨年末の時点で)いまの自分は想像できませんでした。変わらずに現役続行したい気持ちは持っていましたし、現役を続けることは想像していましたが、その場所が東京だとは思わなかった。オファーが届いたのは、大晦日だったと記憶しています。契約した日は、風呂に入ってパジャマに着替えて寝て起きたら、夢が覚めるのではないかと不安でした。真剣に顔をつねったり、契約書を見直したりしました」

 2020年の大晦日は、忘れられない日になった。

 年が明け、徐々にFC東京の一員になることを実感していった。同時に試合に出るための準備も進めている。FC東京で試合に出ることは、10年前にやり残した宿題のようなものかもしれない。

「おかえりなさいと言ってもらえるのはめちゃくちゃありがたいですけど、それはそっと胸の奥にしまって。自分の中ではいろんなチームを経てきて、もう一度勝負する気持ちを全面に出したいと思います」

「シュートストップと、長年ディフェンスと協力して守るという意識をもってやって来たので、仲間と連係して失点の確率を減らすプレーを見てほしい」

 ピッチに立つ自分をイメージしている。そして、FC東京の勝利にために全力を注ぐ心の準備もできている。

「昨季3大タイトルの一つを取ったことはクラブとしてもそうですが、サッカー界の中でもビッグニュースでした。今年は連続してタイトルを取ることが新しい目標になる。必ず達成したいですし、それに向かって進化していきたい。ルヴァンカップに勝って、今年の新しいタイトルへとチームの進化は続くと思います」

 再びFC東京の一員として始める新シーズン。10年という歳月を積み重ねてきた青赤の『新しい』GK、阿部伸行に注目だ。