10年目を、神戸の地で。櫻内渚がジュビロ磐田からヴィッセル神戸に加わった。自らを「使われ役」とするプレースタイルは、精度の高いパス能力を持つ選手の多いこのチームで生きると自負する。走って走って走り抜いて、勝利に貢献する構えだ。

上写真=豊富な運動量が武器だと胸を張る櫻内渚。右サイドバックとしてスプリントに期待だ(写真◎VISSEL KOBE)

「これからヴィッセルに染まっていく」

 ジュビロ磐田一筋の男が、プロ10年目にヴィッセル神戸でのプレーを選択した。「ヴィッセルのために全力を尽くしたいと思います」。昨季はJ2で16試合の出場に留まり、12月15日に磐田との契約満了がアナウンスされていた右サイドバックが、2019年以来のJ1のステージに帰ってきた。

 自らを「使われ役」だと表現する。「右サイドバックを主にやっていて、運動量はあると思っているので、攻撃にもどんどん参加していって、守備にも貢献したいと思っています」というのがアピールポイント。いくらでも走れるからこそ、使われ役になってチームに貢献したい思いは強い。

 神戸だからこそ、その特徴が生きるという期待がある。パスの精度の高い選手を揃えているこのチームでは、走れば走るほどいいボールが出てくる可能性は高まるからだ。

「いままで自分がやってきた経験はヴィッセルでも生きると思っています。周りの選手は非常にうまくて、自分は使われる役だと思うので、動けばパスが出てくると思います。実際に練習をやってみて、ちゃんと出てくるし、精度は高いものがありました。食らいついて成長していきたいです」

 1月25日の練習初日を終えて実際にボールを受けてみて、期待が実感に変わった。31歳とベテランになっても、まだまだ成長の余地を感じることのできる喜び。

 そして、もしパスが出てこなくても、自分が生きるという確信もある。

「ヴィッセルはポゼッションが高くてしっかり回していく、攻撃的なサッカーだと思っています。僕がそこに追い越す動きを加えて、無駄になるかもしれないけれどおとりになるように走っていけば、また違った展開になると思います。ポゼッションの中に運動量という自分のいいところを出していきたい」

 短いパスの応酬の中で、そのスプリント能力で「ひと突き」を加える。それが櫻内の描く「神戸で生きる道」である。

「初めての移籍で、いろいろな経験を踏まえて、これからヴィッセルに染まっていかないといけないと思っています。関西に戻ってきたのはうれしいので、しっかりアピールしていきたい」

 大阪出身で作陽高から関西大を経て磐田に加わってから、10年目の関西への帰還。懐かしい空気も、櫻内のスプリントを後押ししてくれそうだ。