横浜FCの新加入、高橋秀人は昨年12月に左第五中足骨骨折の手術を行ない、全治は2、3カ月。現在はリハビリ中でキャンプで練習に参加できていないが、すでに移籍して「良かった」と実感しているという。

上写真=高橋秀人が移籍を決めた理由と現在の心境を語った。写真は新体制発表時のもの。前列左から3人目(写真提供◎YOKOHAMA FC)

クラブには感謝しても、し切れない

 昨年末に左足を手術した高橋は現在、リハビリ中でまだ本格的な練習には参加できていない。キャンプには帯同しているが、室内でエクササイズや筋力トレーニングをこなしている段階。ただ、すでにこのチームに加入して良かったと感じることがあったと明かした。

「チームの立ち上げ前に、僕がリハビリでクラブハウスに訪れたときに、カズさんと伊野波(雅彦)選手が人工芝のグラウンドで黙々と自主トレをしていました。その姿がすごく印象的で。体を作っているという表現よりは自分を追い込んで、自分の体と向き合って、自分に対してムチを入れているようなトレーニングに見えました。いつまでも、サッカーへの情熱とか、己に向き合い続ける姿勢は無くしてはいけないんだなっていうことを感じて。いま外から練習を見ている中でも、色んな選手が自分と向き合っていると感じます。これは間違いなく、カズさんやシュンさん(中村俊輔)や(南)雄太さんや移籍した松井大輔さんの影響だと思っています。まだ一緒に練習はできていないんですけど、すでに来てよかったなと思っています」

 選択は間違っていなかった。年齢を重ねてもなお、努力を怠らず練習に励む姿に感じるものが多かった。このチームの一員になった意味を、高橋は改めて噛みしめていた。

「僕も周りからすると、サガン鳥栖でもそうですが、ベテランというふうに区別をされる。ただ横浜FCに来ると、ベテランではなくて、いち中堅選手という見られ方をする。そういう中で自分自身が何かを追い求めて成長したいと思いましたし、キャリアを少しずつ積み上げる中では、何かを捨てて、フラットな状態にする中でしか得られないこともあると思います。サガン鳥栖に3年間、在籍させてもらって、人の有難さとか、思いやりとか、そういう部分を勉強させてもらいました。ただ、次にいくときだと。ケガをしているのでマイナスからのスタートですが、いまはそう思ってやらせてもらっています」

 新加入選手であるために、リハビリ中であることは焦りにもつながりそうだが、下平隆宏監督から「しっかり治すように」言われており、本人も「必ずチームの力になれるように焦らずにやって、成長してからピッチの中に戻りたい」と、現在の状況を前向きにとらえている。そう思わせる環境の中に身を置けていることを実感してもいる。

 昨シーズンは新型コロナウイルスに感染し、回復後もコンディションがなかなか上がらず、難しいシーズンを送ることになった。さらにケガをおい、2021年シーズンの開幕は間に合わない状態となっている。高橋は言う。

「そういう自分の去年の背景をすべて分かった上で横浜FCにはオファーを出していただいた。感謝してもし切れないというか、普通だったら話がなくなったりとか、そういうこともあると思います。それでも必要としてくれたクラブに、だから尽力したい。ピッチ内外で、本当にこのクラブで自分がどうしたいのか、どういうふうに生きたいのか、という部分も含めて、それが調整役なのか、ピッチのまとめ役なのか。しっかりみんなに認められるようなプレーをすることか。自分との戦いのシーズンになると思っています」

 クラブに求められること、必要だと思うことは何でもやると話す。オファーをくれた横浜FCに対しては感謝の思いしかない。

「ボールを握る、イニシアチブを取るということを、横浜FCはリスクを恐れずにやっている。そこに魅力を感じました。ただ、勝つという目的の中での手段とか、フィロソフィーとか、サッカースタイルになっていればいいんですけど、ゴールに向かう前提ではないところもあったかなと、傍から見ていて思いました。(ボールを握るのは)あくまで試合に勝つうえで、自分たちのストロングなんだと認識してやることが重要。もちろん、みんな分かっているとは思うんですけど、今年はより強調して、そのスタイルを貫くんだということをチームとして、僕も含めてやっていけたらと思います」

 昨季のチームについて、そんな見立てをしていた。下平監督がミーティングで言っていた「選手一人ひとりの助けになるものが、チーム戦術」という言葉が印象的だったという高橋。指揮官には「なるべく外からでも練習を見てほしい」と言われたと明かす。戦列復帰は開幕後になるが、ピッチ内で状況を判断できる選手として、重要な存在となりそうだ。