徳島ヴォルティスのダニエル・ポヤトス新監督が、オンラインで会見を行なった。政府の新規入国制限により、スペイン在住のダニエル・ポヤトス監督とマルセル・コーチは1月18日の始動時は不在と なるが、チーム作りのビジョンや思いを語った。

上写真=16日にオンラインで会見に出席したダニエル・ポヤトス監督(写真◎スクリーンショット)

ボールを持ち、ゲームを支配する

 ダニエル・ポヤトス新監督はスペイン在住。日本政府の方針に基づき、スポーツ庁よりJリーグを通じてクラブは『緊急事態宣言下における外国人プロスポーツ選手等の入国について、出国元の国・地域を問わず新規入国が認められない』との連絡を受けた。そのため、現在もポヤトス監督は現在もスペインに滞在している。オンラインでの会見に臨んだ新指揮官は、まず最初にこう挨拶した。

「コンバンハ。ハジメマシテ。岸田一宏社長と岡田明彦強化本部に信頼していただき、こうして監督という立場を与えてくれたことに感謝しています。本当に幸せな監督だと感じています。かねてより日本で指導者をやりたいという気持ちがありました。そうして少し前から岡田さんと知り合い、徳島ヴォルティスとの関係が始まって、その中でこうしたシチュエーションに至りました。
 将来があるクラブに来れたことに関して、本当に満足しています。まずは『チームになる』というところを大事にして、ファン・サポーターの皆さんに魅力あるサッカーをお届けしたいですし、クラブの成長もしっかり手助けしてきたいと考えています」

 現在直面している困難な状況については、どう感じているのか。指揮官は率直に語った。

「監督として本当に難しい、複雑な状況だということは理解しています。ただ今は、私だけではなく世界中の方々が難しい状況にあります。しかし、この状況を問題だとはまったく考えていません。逆に挑戦だと思っています」

 指導面で制限があるのは当然にしても、現状を受け入れることが重要。そのうえで、いかに乗り越えるか。ポヤトス監督は難しい挑戦に臨み、打ち勝つとの覚悟を示した。

「少し前から日本にいるスタッフとしっかり話をしています。各スタッフは自分の与えられた役割を理解しています。それに有難いことですが、今はテクノロジーがすごく進歩している。動画を見ながら、練習もできるだけで見られるようにしながら、スタッフとコミュニケーションを取ってやっていきたい。
 もちろん、監督として今ここに座らせてもらっているので、選手全員のことは把握しています。この期間を利用しながら、(昨季の)試合を見ていますし、もう少し月日が経てば、選手一人ひとりとテクノロジーを利用しながら話をしていきたいと思っています」

 シーズンのスタートから直接、指導できないことはチームづくりの面でマイナスだが、できることを最大限やると今回の経験では繰り返した。今季、目指すサッカーはこれまで培ってきた徳島スタイルの『継続と進歩』。その点をクラブでしっかり共有しているという。

「ボールを持ちながらゲームを支配していくということをメインにやっていきたいと考えています。アドバンテージを持てるようにボールを握りながらしっかりとゲームをオーガナイズしていく。アドバンテージを持つことによって、ゴールの確率が確実に上がってくると思っています。徳島が先シーズンやっていたように、ボールを失ったあとは、強い強度ですぐに奪いに行く、そしてまたすぐに攻撃にいくサッカーをやりたい」

 チームを昨季からガラリと変えるわけではなく、継続させつつ、進歩させていくのが、クラブの考え方。ポヤトス監督はその方針に合致する指導者だと、会見に出席した岡田強化本部長も強調していた。そしてその考えに共鳴し、新指揮官は徳島で指揮を執ることに決めたと言った。

「先シーズン、リカルド監督がやられた仕事は偉大なものだったと感じています。そして私自身が考えていることは、先シーズンやっていたことを引き続きやりながら、まだまだ改善できる点、良くして行ける点があると思うので、伸ばしていきたいということです」
「徳島のサッカーは、スペインのサッカーに似ている。コンビネーションを使いながら戦うという印象を受けています。そして相手チームを押し込みながらプレーしていく。そういうメンタルを持つことは、なかなか難しいのですが、そのメンタルを持って昨季もサッカーをしていた。今シーズン、戦う舞台はJ1という日本最高の舞台で、挑戦のシーズンになりますが、そこで徳島のパワーを見せつけたいと私は考えています」

 入国制限がいつ解除されるかはいまだ不透明であり、新生ヴォルティスのかじ取り役を任されたポヤトス監督は、開幕に間に合わない可能性もある。岡田強化本部長は「開幕から何試合か監督が間に合わないことも含めて、覚悟してやっていきます。昨シーズンもそうですが、厳しい状況が色々あった中でも、そこから逃げることなく、チームとしてまとまって、戦って、やはり優勝・昇格を成し遂げた。こういう状況も前向きにとらえて、みんなが悲しんだり、言い訳する姿を誰も望んでいないと思うので。われわれはしっかり挑戦するという姿を示す」とも話した。

 ポヤトス監督はこれまでにレアル・マドリードのU-18監督やU-19監督など長く育成年代で指導にあたり、アトレティコ・マドリードでは分析コーチを務めた経歴を持つ。一方でトップチームの監督歴は昨年、ギリシャのパナシナイコスを3カ月率いたことがあるものの、経験は多くない。ただ、初めてのJリーグでしっかり結果を出すために、全力で仕事にあたると、今回の会見で力強く所信表明した。

「今年は大きな挑戦をするシーズンです。その中で良いプレーをしていきたい。最終目的はまずJ1に残ることですが、その目標を成し遂げるためにも良いプレーをしたいと思っています」

 求めるスタイルも、目標も、明確だ。2021年、徳島ヴォルティスはポヤトス監督とともにさらなる進歩を目指す。