上写真=MVPを受賞したレアンドロ(中央)。左はアダイウトン、右はジョアン・オマリ(写真◎小山真司)
■2021年1月4日 JリーグYBCルヴァンカップ決勝(@国立競技場/観衆24,219人)
柏 1-2 FC東京
得点:(柏)瀬川祐輔
(F)レアンドロ、アダイウトン
2020年は日本に来て一番の年になった
値千金の先制ゴールだった。柏のCB山下達也のロングフィードをFC東京の左サイドバック、小川諒也がヘッドでクリア。そのボールが敵陣に入ってすぐのところで張っていたレアンドロのもとへ届いた。
ボールを受けた瞬間、ヒシャルジソンが寄せてくることを確認すると、半身の状態でドリブルを減速させ、一気に加速。ボールを奪いに来た柏のボランチを置き去りにして、ボックス横まで到達した。
次に行く手を阻んだのはCB大南拓磨だ。ボックス左から正対する形で対峙し、右足でボールを触りながら一瞬、縦に行くの見せかけて大南を右にかわす。ピンチを察知し戻ってきたボランチと大谷秀和と、コースを消すCB山下がレアンドロまでの距離を詰められないと判断するや、ボールをふた突きして、自らシュートコースを作り出す。そして右足でゴール右隅へコントロールショット。長谷川健太監督が試合のポイントに挙げていた先制点を奪ってみせた。
今季、チームはACLにも出場していたため、夏場以降は19連戦という過酷な戦いを強いられた。総力戦でシーズンを戦っているまさにその最中、20節のガンバ大阪戦(10月10日)で、相手と並走している際に、顔を殴打する「悪質な行為」を働いてしまった。その試合でファウルは見逃されることになったが、後日、相手からの異議申し立てがあり、行為が発覚。Jリーグから3試合の出場停止と罰金30万円の処分が下された。当時、長谷川健太監督は「クラブとして反省すべき行為だった」と語っている。自身の指導力不足を謝罪してもいた。
結果的に、チームにも迷惑をかけることになったレアンドロは復帰後、前にもまして走って戦うようになった。ディエゴ・オリヴェイラが負傷で戦線離脱したACLでのプレーは、とくにそのことを強く感じさせた。それは反省からか、エースの自覚からかは分からない。ただ、チームのためにプレーすることの本当の意味を知ったのではないだろうか。必死にボールを追い、ゴールを目指す姿はこの日のルヴァンカップ決勝でも目立っていた。
チームは前半終了間際に柏に追い付かれることになり、後半にアダイウトンのゴールで勝ち越して、FC東京は11年ぶりに優勝を飾った。レアンドロの得点は結局、決勝点とはならなかったものの、攻守に全身全霊を注ぎ続けたレアンドロがMVPに選ばれた。
「アリガトウゴザイマス。とてもうれしいです。みんなで勝ち取った勝利だと思っています。残念ながら(ケガのために)ブラジルにいる、ディエゴ、アルトゥール(・シルバ)、そして出られなかった日本人選手もたくさんいましたが、みんなで勝ち取った優勝です。家族、そして応援してくれるサポーターの皆さんのおかげだと思っています」
レアンドロは表彰式でインタビューに答え、チームメイトとファン・サポーターに感謝した。
「今年は皆さん、大変なシーズンで、大変な年でした。タイトなスケジュールもあった中で、最後に勝てた。みんなで勝てて本当によかった」
仲間の一人一人と抱き合い、スタッフとも喜びを分かち合った。あの日、恥ずべき行為を働いた選手が、最後にチームの勝利に大きく貢献した。
「今年は日本で4年目になりますが、私にとっては一番いい年になりました。鹿島でもACLに勝ちましたが、2試合しか出ておらず、そのあとケガをして手術しましたので。今日は最後まで戦って、タイトルを取れた。素晴らしい1年だったと思います」
2020年はレアンドロにとって、キャリアの中でも忘れられない1年になった。