1月1日、第100回天皇杯決勝が東京・国立競技場で開催され、J1王者・川崎フロンターレがガンバ大阪を1-0で下し、リーグと天皇杯の2冠を達成した。試合後、家長昭博が決勝を振り返り、この1年の成果とチームの成長について語った。

上写真=3トップの右ウイングとして先発した家長昭博。相手の動きを見つつ、幅広く動いてチームの攻撃をけん引した(写真◎小山真司)

■2021年1月1日 第100回天皇杯決勝(@国立競技場/観衆13,318人)
川崎F 1-0 G大阪
得点:(川)三笘薫

天皇杯にかける思いは強かった

 川崎Fは序盤から何度もチャンスを創出し、シュートに持ち込んだ。前半だけ12本。相手のG大阪が2本だったことを考えれば、いかに攻め込んでいたかが分かる。5バックで守る相手にスペースを消された中でも、ボールを動かし、スペースを作ってシュートを放った。

「4バックと、3バックで5バック気味というのは想定していたんですけど、実際、メンツだけ見たらリーグ戦のときと変わらなかったので、4バックかなと思って試合に臨みましたが、5でした。サイドにフタをしにきている感じはありましたね。いつもよりニアゾーンとかにスペースがなくて、けっこう苦しみました。ただ、徐々に(大島)僚太と(田中)碧のところでボールを持てるようになってきて、それにも適応できるようになってきた」

 リーグ優勝を決めた試合もG大阪戦だったが(29節・11月25日)、そのときと相手は異なる陣形で臨んできた。その一戦で川崎Fは5-0で圧勝し、家長はハットトリックを決めている。同じ轍は踏まないとG大阪も対策を立ててきたということだろう。まず守備を安定させることに軸足を置いていた。

「1点、取れるチャンスはいっぱいあったんですけど、やっぱり決勝戦は甘くないなと思いながらやっていましたし、焦りはなかったですけど、非常に焦れた展開だった」と家長も相手の守りに苦しんだことを認めたが、とはいえ焦りは一切なかった。相手の形をしっかり見極め、どうすれば攻略できるかを考えていた。そして今年のチームは、そうした考えを共有することができる。それこそが強みであり、成長だ。

 後半、ボールホルダーに対して複数人が受け手となるべく川崎Fの選手たちは積極的に動いた。分厚く守る相手に対して、どう戦うべきか。常に主導権を握って戦うことを突き詰めてきた、この1年間の成果をピッチで示す。

「やっぱり僕たちは1年間、高いものを目指してやってきたし、この決勝戦でも1年間やってきたことをすべて出して、自信をもってやろうとみんなで言っていました。その積み重ねが、試合に出ていたと思います。それが勝利につながったと思います」

 55分、レアンドロ・ダミアンの右から斜めに入れたボールを左サイドから走り込んで受けた三笘薫が、きっちり決めた。ネットを揺らしたのはその1回だけだったが、後半、チームとして打ったシュートは15本。試合全体では27本。G大阪の7本を大きく上回った。

 1点を先行されることになったG大阪は選手を代え、陣形も4バックに変更したが、その変化にも川崎Fは即座に対応。「その都度、中で話しながらやっていた」と家長は明かしている。そうした対応力、修正力もまた、川崎Fがこの1年で磨いてきたものだ。前半に苦しんでも後半にはきっちり修正して勝ち切ってきた。天皇杯決勝も、同様だった。

「僕たちには、最後の試合を勝ちで終わらせたい理由がありました。クラブ全体で言い合うことはなかったですけど、強く感じていました。最後に、こうしてカップを掲げられたのは価値あることだと思いますし、みんなが望んでいたものを手に入れられたというのは、非常にうれしいことだと思います」

 中村憲剛がこの試合で現役を引退し、オフにチームを離れることになる選手もいるかもしれない。最強の誉れ高い『川崎フロンターレ2020』のメンバーで戦えるのは、この日がラスト。言わば、集大成の試合で、チームは積み上げたものをしっかりと出した。

「天皇杯にかける思いはチーム全体で、とても強かったので、獲れて、いま非常に満足しています。とても素晴らしい結果が得られたと思います」

 家長は2冠達成という結果はもちろん、チームが積み上げてきたものを発揮できたことを喜んだ。