天皇杯JFA第100回全日本サッカー選手権大会決勝が1月1日に行われ、川崎フロンターレが1-0でガンバ大阪を下して初優勝、J1リーグとの2冠を達成した。この日を最後に引退する中村憲剛の出番はなかったが、優勝で次のステージへ旅立った。

上写真=決勝で出番がなかった中村憲剛だが、天皇杯初優勝を成し遂げた(写真◎小山真司)

■2021年1月1日 第100回天皇杯決勝(@国立競技場/観衆13,318人)
川崎F 1-0 G大阪
得点:(川)三笘薫

「フロンターレの新しい歴史につながる」

 天皇杯をその頭上に高々と掲げて、中村憲剛の素晴らしい18年は幕を閉じた。

 出番は、なかった。天皇杯決勝で55分に三笘薫が先制したものの、追加点はなくわずかなリードのまま時間は過ぎていく。89分に3度目の交代で脇坂泰斗がピッチに出ると、中村憲剛が出場することがなくなった。

 それでも、最後まで戦い抜いた仲間を鼓舞し続けて、天皇杯初優勝の瞬間をともに迎えた。

「感無量です。うれしすぎます。おそらくたぶん、いま世界で一番幸せなサッカー選手なんじゃないかと思います」

 決勝の前々日の会見で、4年前のこの場で鹿島アントラーズに敗れた悔しさを口にした。そこから4年間、「水をも漏らさない戦いができるように」と鬼木達監督とともにチームを引き締めてきた。1-0のままG大阪の反撃をかわすことができたのは、その結実だ。

「前半から自分たちでボールを握って決定的なチャンスを作っていましたし、ガンバさんの頑張りもありましたからそんなに簡単にはいかないと思っていました。

 だけど後半に1点取って、最後ああいう展開になるのは1点差なので、みんなで頑張ってしのいで、僕もアップしながら声をかけながらともに戦っていたつもりです。

 出られなかったのは残念ですけど、それは勝負なんで、勝ちがすべてというのは4年前の決勝の敗退のときに痛いほど感じたことなので、みんながその悔しさを胸に4年間培ってきたものが最後出せて勝てたのは、フロンターレの新しい歴史につながるんじゃないかとベンチから見てて思いました。頼もしかったです」

 ケガから復帰して、しっかりとチームに貢献して、J1で優勝して、そして天皇杯でも優勝する。最後の1年と決めた2020年シーズンは「出来すぎ」と笑ったが、サッカーの神様は最後に背番号14に満面の笑みを向けた。

「18年というのは本当に長い選手生活で、いまでも(引退する)実感がなくて、来週も等々力で蹴りそうだけど、それもかなわないのは時間を追うごとに感じてくるんじゃないかと思います。18年の最後に中村史上最高の1年がみんなのおかげで過ごせたのは本当にうれしく思います」