天皇杯JFA第100回全日本サッカー選手権大会の準決勝が12月27日に行われ、川崎フロンターレ(J1優勝)とブラウブリッツ秋田(J3優勝)が対戦。川崎Fが安定のパスワークで主導権を握り続けて2-0で快勝、1月1日の決勝に駒を進めた。

上写真=三笘薫がていねいに流し込んで川崎フロンターレが先制。最後まで安定した試合運びで決勝へ(写真◎小山真司)

■2020年12月27日 天皇杯準決勝(@等々力:観衆9,772人)
川崎F 2-0 秋田
得点者:(川)三笘薫、田中碧

すべての皆さんの心に刻まれる試合だった

 J1チャンピオンの川崎フロンターレが無理をせず、確実に効率よく決めて、決勝進出を決めた。

 キックオフ直後は意気を上げて挑むブラウブリッツ秋田が川崎Fの陣内へ突き進むが、時間の経過とともに川崎Fの時間に。ややスロースタートとなった川崎Fだが、秋田の直線的なプレスをテンポの良いパスワークでかわしていくのはこれまで通りで、何度もビッグチャンスを作っていった。

 なかなかゴールを割ることができず、秋田の右サイドからのロングスローでゴール前にボールが運ばれる場面もあったものの、39分には川崎Fらしく完璧なコンビネーションで先制した。レアンドロ・ダミアンのポストワークから大島僚太が前を向いて受け、優しく裏のスペースに流し込むと、走り込んだ三笘薫が足裏でていねいにボールを前に運んでからゴールにパスをするように流し込んだ。チャンスの数からすれば遅いと言えそうな先制ゴールだが、これでさらに試合を優位に進めた。

 後半に入っても試合の流れは変わらず、川崎Fがボールを動かして攻めていく形。交代策を使いながら守備のパワーを落とさずに向かってきた秋田に、川崎Fもなかなか最後の一差しができないままだったが、そういうときにセットプレーで決めきるのも強さの秘密。83分、田中碧が壁を越して落とすキックでFKを直接ゴール右にねじ込んで、2-0とした。

 これで、引退を決めている中村憲剛をピッチに送り込む準備が完了。85分に登場した中村は、短い時間ながら最後の等々力陸上競技場でのプレーを楽しんで、サポーターに「一緒に優勝しましょう」と声をかけた。

 秋田の吉田謙監督は、まずは1年間を戦い抜いたことへの感謝を口にした。

「厳しい情勢の中で本当に1年間クラブと選手を応援していただきましたすべての皆さまに感謝申し上げます。負けた試合ですが、応援していただいたすべての皆さんの心に刻まれる試合だったと思います。これを糧に強くなれるようにひたむきに努力してまいりたいと思います」

 カテゴリーが2つ上の日本一のチームに対しては「結果は負けましたけど、磨き上げてきたことは全力で出し切ってくれたと思います。守備の一体感と縦パスに対する強烈な意識(を出すことができた)」と評価した。

 川崎Fの鬼木達監督はなかなか攻め崩せない中でも「カテゴリーが違う相手で難しかったですが、選手たちは焦れずに自分たちのサッカーをやり続けてくれた」と選手をねぎらった。そしていよいよ、手にしたことのないタイトルへの挑戦権を得た。

「今シーズンは複数タイトルを取ろうと進めてきて、決勝に進めたことをうれしく思います。タイトルを取らないと意味がないので、何度も経験してきていますし違いは分かっています。チームとして取ったことのないタイトルを勝ち取りたいです。そのためには、自分たちらしいサッカーをしなければいけないので、そこに集中してやっていきたい」

 今季最後の決戦が楽しみだ。

現地取材◎平澤大輔 写真◎小山真司