「中村憲剛引退セレモニー&優勝報告会」が12月21日、神奈川県川崎市の等々力陸上競技場で行われた。18年間のプロ生活を振り返って19時からたっぷり2時間半以上、中村のゆかりの人たちが登場し、中村への思いを口にした。

上写真=中村憲剛が神輿に乗ってサポーターに最後のあいさつ。フロンターレらしい演出の数々で送り出された(写真◎J.LEAGUE)

「サヨナラは言いません」

 偉大なバンディエラ、中村憲剛の引退にふさわしいセレモニーだった。現役生活18年間の思い出がたっぷりと詰まった2時間半。ゆかりの人が次々と登場して、中村との思いを語っていった。

 VTRでは川島永嗣(ストラスブール=フランス)、カズ(横浜FC)、イニエスタ(ヴィッセル神戸)らも登場してメッセージを伝え、川崎フロンターレのOB選手たちが登壇すると、岡山一成(VONDS市原監督)、鄭大世(アルビレックス新潟)、大久保嘉人(東京ヴェルディ)が代表してそれぞれの「憲剛愛」を語った。

 川崎市民栄誉賞の授賞式、川崎FのJ1リーグ優勝報告も行われ、小林悠が選手を代表して感謝の言葉を涙ながらに語り、中村の長男リュウゴくんの素晴らしいメッセージが聞く人すべての心を打った。

 盛大なセレモニーは最後に、本人の言葉で締めくくられる。

「川崎フロンターレの中村憲剛です」

「ずっとこの日が来ないことを考えていて、でもいまこのVTRを見て、あ、オレ引退するんだと思いました。発表もして会見もして、でも自分の中では他人事のような気持ちだったんじゃないかといま分かりました」

「今日はたくさんの人が集まってくれて、みんながありがとうと言ってくれましたが、ありがとうを言いたいのは僕の方です」

「いまいる選手たちやクラブのみんな、スタッフ、サポーター、スポンサーのみなさんでこれまで以上に愛されるクラブになっていってほしいと心から望んでいます」

「フロンターレに入りたい子どもたちへ。僕は高校生のときも小さくていまでも華奢だけど、40歳までプレーできました。体の小ささはハンデではないということです。中高生で悩んでいる人もいると思うけれど、僕のキャリアがそうではないと言っています。自らフタをしてほしくないし、指導者の方も小さいだけで使わない、足が遅いだけで使わないという目線で見ないでほしいと心から思っています」

「ハンデはチャンスだと思ってください。そして環境やチームメートに文句を言うのではなく、自分にベクトルを向けてください。一日一日頑張れば、道は開けます。そして周りが助けてくれます。悩んでいる子どもたちも、また明日から新しい気持ちでボールを蹴ってほしいと思います」

「川崎フロンターレに入れてよかった。みんなに会えてよかった。頼もしい後輩に任せて、僕は次のステージに進みたいと思います」

「これが選手として最後に話す言葉になりました。この景色は一生忘れません。本当に、本当に感謝しています。フロンターレ最高です! ありがとうございました!」

 こう話して神輿に乗り、場内を一周。サポーターが集まるGゾーンの前でトラメガで最後の挨拶をして、事前に編集していたチャントを流して思いを共有し、胴上げが14回。

「サヨナラは言いません。また会いましょう」

 こうして、中村憲剛の現役生活は終わ……らないのだ。

 今度こそ本当に最後の大会となる天皇杯がある。引退セレモニーは節目だが、12月27日に準決勝、勝てば1月1日に決勝だ。

 その日まで、駆け抜ける。