上写真=早坂良太(右)は77分に途中出場。試合後は笑顔でサポーターの声援に応えた(写真◎J.LEAGUE)
■2020年12月19日 J1リーグ第34節(@埼スタ/観衆19,319人)
浦和 0-2 札幌
得点:(札)駒井善成、田中駿汰
引退したという「実感がない」
現役最後となるゲームを終えた後の顔は晴れやかだった。コンサドーレ札幌の早坂良太は。オンラインの記者会見にもすっきりした表情で現れた。
「引退を発表してから多くのメッセージをもらいました。感謝の気持ちばかりです。自分が好きなことを仕事にできて、多くの人に応援してもらいました。僕は恵まれていたと思います」
ラストマッチを迎える前も普段どおりに準備を整え、調整してきた。試合に向けてトレーニングするのも最後だったが、黙々とこなした。現役生活に幕を閉じるカウントダウンが始まっても実感は沸いてこなかった。本人も驚くくらいだという。試合を終えたあとも「実感がない」とぽつりとつぶやいていた。
「終わって、トレーニングをしなくなったときに感じるのもかもしれない」
札幌には2017年から4シーズン在籍。ここ2シーズンは途中出場が多かったものの、17年、18年は先発にも多く名を連ね、攻守両面でよく働いた。12年から5シーズンにわたって活躍したサガン鳥栖時代にベースをつくり、チームのためにハードワークする姿勢を貫いた。
国立の静岡大学を卒業後、JFLのHondaに加入して2シーズン、セミプロでプレー。2010年にJ2の鳥栖に移籍してからプロ契約を結び、11シーズンにわたってJリーグの舞台で活躍してきた。ファン・サポーターからも愛された。最終節の浦和レッズ戦では、埼玉スタジアムのスタンドに大きな横断幕が掲げられた。同日、現役引退することが決まっていた石川直樹の名前とともにメッセージがそえられていた。
<チームを支え続けた2人の姿を俺達は忘れない>
スタンドを見上げる早坂は笑顔を見せていた。
「すべての人に感謝の気持ちを伝えたい」
12月19日。35歳で悔いなく、ユニフォームを脱いだ。
取材◎杉園昌之