J1リーグ最終節の柏レイソル戦で、川崎フロンターレは敵地で2点を先行される苦しい戦いを強いられた。だが、3ゴールを集めて逆転に成功。勝利の立役者となったのが、後半から登場してタメを作り、ピッチを走り、2ゴールを決めた家長昭博だった。

上写真=逆転勝利に貢献した家長昭博。この日の2得点でJ1キャリアタイの11得点となった(写真◎J.LEAGUE)

■2020年12月19日 明治安田生命J1リーグ第34節(@三協F柏/観衆5,137人)
柏 2-3 川崎F
得点:(柏)オルンガ、瀬川祐輔
   (川)家長昭博2、レアンドロ・ダミアン

指揮官が求めるのは相手の脅威になること

 チームがビハインドを背負った状態で後半から登場し、見事な2ゴールを決めた。仲間の気持ちを奮い立たせる追撃の1点と逆転する1点。勝利の立役者になった。

 まずは1点目。CKの場面で、屈強なCB顔負けのプレーを見せる。田中碧が蹴った滞空時間の長いボールに合わせてジャンプ。自身のマーカーである江坂任より先に飛び、空中で競らせない体を預けると、自らはドンピシャのタイミングでボールをとらえ、ゴール隅にヘディングシュートを決めた。

 それは後半早々に柏に2点目を与えた直後のゴールであり、チームメイトの闘志に火をつける一発になった。

 そして2点目。レアンドロ・ダミアンが相手GKのキム・スンギュのキックミスから同点ゴールを挙げ、2-2となっている状況から勝ち越す、決勝ゴールになった。自陣で相手のパスを小林悠がカットし、脇坂泰斗がこぼれ球を拾って三笘薫へつなぐ。三笘が自陣のセンターサークル付近からぐいぐいとボールを運び、左前方を走る家長へボールを届けた。

 ボックス内を中央から左斜めに走りながら、キム・スンギュの動きを冷静に見極めた家長は、左足でボールを浮かせるようにシュート。見事にネットを揺らした。

「非常に苦しい展開だったんですけど、1点を追いつくのが比較的早かったんで、残り時間もあったらいけるだろうと思って。(ピッチに入る際に)とくに指示はなかったですけど、いつも通りサイドで起点になってくれと言われました。
(決勝点は三笘)薫からいいボールが来たので、ちょっと外に流れてしまったんですけど、キーパーが出てきていたので、引き付けて横に浮かせて、イメージ通りでした。(冷静だったのでは?)珍しく冷静でした(笑)」

 フラッシュインタビューでゴールを振り返った家長は、事も無げに言った。今季、チームとして得てきた自信と家長自身の充実がそうさせるのか。

「(今季は)結果としては臨んだ結果が出ましたし、非常にいいシーズンだったと思います。今日の試合を見てもらえれば分かる通り、全部紙一重だったので、もっともっと力をつけて、試合内容で圧倒できるようにやっていきたいです。今年の天皇杯はレギュレーションが変わって特別ですけど、チームにとっても(中村)憲剛さんが最後なので、特別な2試合(=準決勝、決勝)。ぜひ元旦に優勝できたらと思います」

 この日の2得点で大宮時代の2016年に並ぶJ1キャリアタイの11ゴールとなった。タイトでハードなシーズンながら、その力をしっかり示したと言える。鬼木達監督もそのプレーには称賛を惜しまない。

「今日はまず、彼の持ち味である、タメを作れるというところを見せてくれました。それプラス、今シーズン、すごくいいのは得点を取るところであって、ゴールへ向かう姿勢です。やっぱりそれがあっての家長で、彼が最後までああいう形でゴールに向かって行ったら、相手にとって非常に怖い存在になる。走ることとゴールを目指すこと、そしてタメを作ること。すべてをやってくれたと思っていますが、これを続けていくこと、そして、もっともっとどん欲にやっていけば、まだまだ成長するんではないかと思っています。今日はすごく良かった」

 指揮官はこの日の柏戦を「2020年のフロンターレの象徴的な試合」と称したが、その中心に、家長昭博がいた。