川崎フロンターレの中村憲剛はJ1のホーム最終戦、16日の浦和レッズ戦を前にオンライン取材に応じた。何より勝利を欲しているのは、自身のJ1ラストゲームだからではなく、直近2試合を引き分けてホームのサポーターに勝利を届けたいから。これまでと変わらないスタンスで浦和戦に臨む。

上写真=16日のホーム最終戦も変わらぬスタンスで臨むと中村憲剛は語る(写真◎Getty Images)

残り時間もサッカーがうまくなるために費やす

「最後だというのは分かっているんですけど、なんか実感が沸かないですね」

 27日の天皇杯準決勝を控えるが、Jリーグの公式戦としては最後のホームゲームとなる一戦を前に心境を問われ、中村憲剛は答えた。

「最後だからというよりも、目の前の試合に集中したいなというのがあります。浦和から90分で勝ち点3を取ることだけをまず考えて、試合に入ると思います。ただ、その試合が始まる前後なんかは、思うことはあるのかもしれませんけど、また終わったときに話ができるんじゃないかなと」

 試合に向かう心持ちはこれまでと変わらないという。勝つために準備し、そして当日を迎える。

「チームの勝利のために自分のプレーをずっとやってきたので、試合に出るチャンスをもらえれば、これまで通りにやる。何かここで変えるとか、そこまで器用な選手でもないですし、自分の出せることを浦和戦も出すだけ。今までやってきたこと、今やれる自分のベストを尽くす、それだけです」

 J1は残り2試合になった(16日の浦和戦、19日のアウェー柏戦)。つまりは現役選手としてJリーグの試合でプレーできるのは、2試合のみだ。しかし、感傷に浸ることはなく、あくまでこれまで通りに臨む。だから前節の反省もする。優勝後の2試合を引き分けて浦和戦を迎えることについては、こう語った。

「(清水、鳥栖との)アウェー二つを引き分けて帰ってくるホームゲームなので、ホームのお客さんの前で、自分たちらしいサッカーを展開しないといけない。ここ2試合は勝てていないので、しっかりホームでアグレッシブに戦い、勝ち点3を取れるようにやるだけだと思っています。鳥栖戦もチャンスは多かったですし、勝ち切れる試合でもあったと思う。その意味では途中から出た自分は責任を感じています。対策を講じてくる相手に対して、それを上回っていくということを、ある程度は示せました。ただ(浦和戦では相手の)タイプも変わるし、選手も変わるので、そういう中で浦和がどういうふうに出てくるかというのを見ながら、けれども自分たちからしっかり仕掛けるというのをやりたいと思っています」

 反省と準備を怠らない。自身のJリーグにおけるホーム最終戦であることにフォーカスするよりも、ただただ勝利を欲していた。また、『現役でいる時間が残り少ない中で、若い選手に何を伝えているのか』と問われて、次のように答えている。

「正直、この5年くらいはそのつもり(=引退するつもり)でやってきました。特にここ5年は若い選手たちにアドバイスする回数がケタ違いに増えましたし、そういう意味では、あと2週間ちょっとだから急いで焦って何かをするという状況にはないです。むしろ今日の練習のボール回しとかで取られないとか、守備だったら切り替えるとか、これまでもこだわってきましたけど、1本の質に残りの時間も、毎日、自分がサッカーがうまくなるために費やす。それを周りが見て、何かを感じてもらえればいいかなと思っています。そういう選手としてのスタンスはまったく変わっていない。周りのとらえ方が変わっているのはあるかもしれませんけど」

 J1を制したチームでトップレベルを維持したまま、最後までサッカーがうまくなるために努力し、チームのためにプレーしてスパイクを脱ぐ。中村憲剛だからこそできる、中村憲剛にしかできない、フィナーレの迎え方だろう。