ヴィッセル神戸は13日、カタールで開催されているAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の準決勝、蔚山現代戦に臨んだ。負傷のイニエスタがベンチ外となる中で、2戦連続で120分を戦うことになったが、魂の熱闘を見せた。しかし延長後半にミスからPKを献上。あと一歩のところで決勝進出はならなかった。

上写真=死力を尽くして120分を戦い抜いた神戸だが、決勝進出はならなかった(写真◎Getty Images)

■2020年12月13日 ACL準決勝
(@カタール・アルジャノブスタジアム)
蔚山現代 2-1 神戸
得点:(蔚)ビヨルン・ヨハンセン、ジュニオール・ネグラン
   (神)山口蛍

・水原三星メンバー:GKチョ・スヒョク、DFチョン・ドンホ(55分:キム・テファン)、キム・ギフィ(68分:チョン・スンヒョン)、ダビー・ブルトハイス、パク・チュホ(63分:ホン・チョル)、MFシン・ジノ(96分:ウォン・ドゥジェ)、イ・チョンヨン(55分:ビヨルン・ヨハンセン)、コ・ミョンジン(46分:イ・グノ)、ユン・ビッガラム、キム・インソン、FWジュニオール・ネグラン

・神戸メンバー:GK前川黛也、DF山川哲史(120分:藤本憲明)、菊池流帆、トーマス・フェルマーレン、酒井高徳、MF山口蛍、郷家友太(110分:田中順也)、安井拓也(82分:藤谷壮)、FW西大伍(65分:佐々木大樹)、ドウグラス、古橋亨梧

2試合続けて延長戦に突入

 まさしく激闘であり、熱闘であり、死闘だった。神戸は2戦連続で延長120分をプレーし、死力を尽くして戦った。だが、決勝滲出にはあと一歩及ばなかったーー。

 先制したのは神戸だった。後半52分、右CKを得ると、安井がグラウンダーのボールを蹴り、走り込んだ山口がダイレクトで右足を振り抜く。見事に蔚山の守備陣の裏をかいたゴールだった。

 そこから試合は起伏に富んだ展開になっていく。75分に相手の攻め気を逆手に取って、中盤で安井がボールを奪い、古橋へ展開。ドウグラスに縦パスが入り、ボックス右へ駆け上がっていた安井が再びもらってシュート。GKに当たったこぼれ球に反応した佐々木が右足で押し込み、ネットを揺らした。だが、ナワフ・シュクララ主審がVARのオンフィールドレビューを実施。安井のボール奪取時のプレーがファウルとの判定で、ゴールは取り消されてしまう。

 その5分後には、キム・インソンに右サイド深くまで進入を許してクロスを上げられ、バイタルエリアからユン・ビッガラムにシュートを打たれた。ボールの軌道に選手はそろっていたが、ヨハンセンにコースを変えられ、ゴールイン。いったんは副審が旗を上げ、オフサイドと判定されたが、VARの結果、蔚山のゴールが認められた。

 結果的に神戸はVARによって自分たちのゴールは取り消され、相手のゴールが認められた格好。メンタル面を保つのが難しい展開の中で、試合は延長戦へ突入することになった。神戸にとっては2戦続けての120分の戦いだった。

 延長前半はピンチの連続となるが、GK前川が何度もチームを救う。94分にはユン・ビッガラムのミドルシュートは右手1本ではじき出し、103分のヨハンセンのドンピシャヘッドは左手1本でストップした。これぞビッグセーブというプレーを連発。気迫でゴールを死守し、疲労が見え始めている仲間を鼓舞した。

 守護神の活躍でピンチをしのいだ神戸は延長後半の開始直後(105分)にドウグラスが敵陣でボール奪取に成功し、GKと1対1の場面を迎える。しかしシュートではなく、古橋へのパスを選択してチャンスをフイにしてしまう。108分にも右サイドのFKからドウグラスがヘッドで狙うが、今度は相手GKの好守に阻まれた。

 ピンチとチャンスが交互に訪れる中、終了間際に決定機を逃したことを悔やむことになる。119分、エリア内でボールをキャッチし損ねた前川がネグランにボールを奪われ、思わず倒してしまう。まさかのPK献上。PK戦での決着が頭をよぎる時間帯に、相手にのみPK機会を与えることになってしまった。これをネグランに決められ、1-2。まもなく、試合終了の笛が鳴った。何度もチームを救った前川が、ミスから失点を招く結果になってしまった。

「負けてしまった悔しい気持ちでしますが、選手、コーチングスタッフ、クラブに関係するみんなで一緒に、一体感のもとに戦ったと思います。優勝には手が届かなったですけども、その過程というのは素晴らしいものがありました。一体感という言葉をよく使いますけど、実際に一体感をもってプレーするのは難しい。ただ、ACLという素晴らしい大会の中で、われわれのクラブは一つになっていた。そういう大会だったと思います。目標は達成できなかったですが、われわれの歩んでいる道は間違っていない。正直にそう思いました。この経験をしっかりと生かして、来シーズン、ヴィッセル神戸というクラブがさらに成長できるように、引き続き努力をしていきたいと思います」

 三浦淳寛監督はそう言って、チームと選手を称えた。アジアの頂点を目指してカタールで過ごした時間と経験は、何ものにも代えがたいもの。とくにノックアウトステージに入ってからの激闘は、若い選手たちをタフにし、チームを大きく成長させた。

 イニエスタに代わって出番を得て気迫のプレーを見せた安井も、幻のゴールを決めた佐々木も、幾多の好守を見せた一方で最後に悔し涙を流すことになった前川も、闘志むき出しのプレーで守備を支えた菊池や山川、攻守両面で安定感を示した郷家にしても、この大会で経験したことが今後のキャリアに大きなプラスをもたらすはずだ。

 ACL初挑戦にしてベスト4に進出という結果もさることながら、神戸にとってはこの経験が収穫だろう。指揮官が言うように「歩んでいる道は間違いない」なら、この先にはきっとアジアの頂点があるに違いないーー。