ヴィッセル神戸は7日、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)のラウンド16、上海上港戦に臨み、2-0で勝利を飾った。快勝に大きく貢献したのが、西大伍だ。ゲームの流れを読み、攻守両面で貢献。チームの2点目も記録した。

上写真=攻撃的なポジションも違和感なくプレーし、勝利に貢献した西大伍(写真◎VISSEL KOBE)

■2020年12月7日 ACLラウンド16
(リモートマッチ/@カタール・ハリファインターナショナル・スタジアム)
神戸 2-0 上海上港
得点:(神)アンドレス・イニエスタ、西大伍

ロマン、何でしたっけそれ?(笑)

 カタールでACLが再開されて以降、西大伍は右サイドバックではなく、右サイドハーフなど攻撃的なポジションを担っているが、この日も3トップの右でプレーした。いつも以上に攻撃面で貢献することを求められたが、後半開始早々の50分に、見事に期待に応えてみせた。

 ドウグラスの左からのクロスに古橋亨梧が反応。ボックス内へ飛び込んだが、シュートは打ち切れなかった。しかし古橋は自ら左にボールを持ち出して攻撃を作り直す。そのとき西はボックス中央にポジションを修正。ゴール正面でパスを待った。古橋が左からクロスを入れると、西はマークに付いている相手DFよりも早く動き出し、ジャンプしながら右足を伸ばした。そしてボールの軌道を変えるようにシュート。相手GKの届かいない位置へとボールを流し込んでみせた。

 1点を追いかける相手が攻めに出ている時間帯だった。そんな攻め気をそぐ、重要なゴールだったと言っていい。前半にイニエスタが決めた1点目にしても、西はしっかりと関わっていた。山口蛍からボックス内にいるイニエスタに縦パスが送られた瞬間、西は内側から外へと走って、相手DFを引っ張った。ゴールを生むために間接的にアシストしていたのだ。

「チームがうまく回るように、中継役になったり、いいタイミングで味方のスペースを空けたりできればいいかなと」

 本人は右ウイングでプレーする際に意識したことを問われて淡々と振り返ったが、チームを勝たせるための仕事を全うした。もちろん、守備の局面では素早い切り替えで相手のサイド攻撃をたびたび封じ、普段はサイドバックとしてプレーする西らしく、1対1の強さを発揮。その判断には迷いがなく、プレーには落ち着きがあった。

 三浦淳寛監督は西のアタッカーとしての起用について「Jリーグの中で色んな選手の起用法や組み合わせを試してきました。それはあくまでもこのACLで結果を出すため。(Jリーグで)結果につながりませんでしたが、各選手の適性ポジション、ユーティリティ性を試してきたことが今回、大伍を前線で使うことにもつながりました」とACL用の選択だったことを明かしている。そして西は、そんな指揮官の期待に見事に応えてみせた。

 そもそも西は鹿島アントラーズ時代の2018年にACL優勝を経験している。しかも、そのときもラウンド16で上海上港と対戦し、ホームで行なわれた第1戦でチームの2点目を決め、勝利に貢献した。アジア王者を経験しているその存在が神戸にとって大きいのは言うまでもない。

 前日会見で、決勝トーナメントを勝ち上がっていくために必要なことを問われ、「気持ちと運と、ロマン」と語っていたが、西はこの日、勝利への強い気持ちをもってプレーし、運を味方につけ、そしてアジア王者になるというロマンを見る者に示した。

「(ロマンの詰まったゴールでしたが?)何ですか、ロマンって(笑)。たまたまですけど、まだまだな部分が多いので、この大会でも成長していきたいなと思います。(準々決勝への意気込みは?)勝つだけですね。90分終わったときに勝っていればいいという意識をみんなで持つことです」

 アジア制覇まであと3試合。頂点を知る西がチームを引っ張る。