明治安田生命J1リーグで見事に優勝を決めた川崎フロンターレ。史上最速で決めた圧倒的なチャンピオンの誕生劇だったが、キャプテンの谷口彰悟はその試合は出場停止。さぞや悲しんでいると思いきや、意外なほどサバサバとしていて…。

上写真=表彰式は大島僚太がシャーレを受け取ったが、もちろんカメラの前ではこのポーズ!(写真◎Getty Images)

「僕がその中心を担っていかなければいけない」

 川崎フロンターレのキャプテンとして初めて、表彰式で優勝のシャーレを高々と掲げるはずだったのだが、チャンスを失ってしまった。きっと悔しかっただろう、と考えていたのだが、どうやら浅はかだったようだ。

「それが、まったくと言っていいほど気にならなかったというか」

 谷口彰悟は拍子抜けするほど、あっけらかんとしていた。優勝を決めたガンバ大阪戦は、その前の大分トリニータ戦の退場処分によって出場停止。スタンドから仲間の勇姿を見守っていた。

「もちろんやってしまったことはしょうがないですし、すぐ切り替わっていたというか、チームメートには申し訳ないんですけど、気にする気配が自分にはなかったんです」

 大分戦では自力で優勝を決めようと意気込んでいたのだが、結局、谷口のファウルで与えたPKを決められて0-1で敗れ、G大阪戦を迎えた。

「ガンバ戦で優勝を決めるために自分で何ができるか」と切り替えて練習に臨んだ。「もちろんそこで決めてほしかったし、みんなの覚悟はトレーニングからも伝わってきましたから、アグレッシブで強かったし、素晴らしい優勝でしたね」とG大阪に5-0で圧勝して優勝を決めた仲間の活躍が頼もしく映った。

 というわけで、今年キャプテンに就任した谷口の初めての表彰式は、天皇杯で優勝してからになる。準決勝からの登場だから、2勝すれば優勝だ。

「次に向かっていく姿勢を見せなければいけないですし、このチームはまだまだ高みを目指しているという雰囲気を示さなければいけません。(リーグの最多勝ち点、最多得点の)記録という意味でも1試合も無駄にできないですから、しっかりとまず勝つということはこれまで同様にブレずにやり続けていきたいと思います。その熱量をみんなで合わせてゲームに入りたいと思います」

 その準備の部分に、キャプテンとしてのプライドがのぞく。

「どれだけ天皇杯を本気で取りに行く集団にできるかは間違いなく大事だし、僕がその中心を担っていかなければいけないと思います。そのためにはリーグ戦の残り試合は無駄にできないですし、それはみんなが理解していると思います。すべてが必ずつながってくると思っていますし、緩んでいる選手はいないですし、まだまだ激しく高めあっていけています。順調に次に進めていると思っています」

 この1年ですっかりキャプテンらしくなった。だから今度こそ天皇杯でカップを高々と掲げて、「キャプテン谷口、ここにあり」を示したい。

 とはいえそれは、作られたキャプテン像かもしれない。シャーレを掲げることにこだわりを示さなかったぐらいだから、天皇杯で優勝しても、引退を決めている中村憲剛にその栄誉を譲るのかもしれない。でもそれはそれで、谷口らしいキャプテン像が出来上がった瞬間として記憶すればいいだろう。