AFCチャンピオンズリーグで横浜F・マリノスがクラブ初のグループステージ突破を果たした。全北(韓国)への4-1の勝利で達成したが、先制点でチームを勢いづけたのがティーラトン。その左足で頂点へと飛んでゆく。

上写真=先制ゴールを決めたティーラトンを中心に喜びの輪。横浜FMらしい攻撃サッカーを披露した(写真◎Y.F.M)

■2020年12月1日 ACL第5節
(リモートマッチ/@カタール・アルジャノブ スタジアム)
横浜FM 4-1 全北
得点:(横)ティーラトン、マルコス・ジュニオール、仲川輝人、オウンゴール
(全)グスタボ

「行くしかないと思いながら打った」

 17分の先制点は、そのパワーと正確性から「悪魔の」と恐れられる左足が生み出した。

 扇原貴宏、畠中慎之輔とFKを素早くつないで、左ハーフスペースにいたティーラトンへ展開。少し前に持ち出すが、全北の選手たちは誰も寄せに来ない。目の前にもう少しスペースがあるのでもう一つ持ち出したところで、悪魔が笑った。

 右足を力強く、しかししなやかに踏み込む。左足を振り抜くと、インステップでしっかりと芯をとらえて、全身のパワーすべてをボールに乗せた。教科書のような美しいフォームから放ったシュート。次の瞬間、ゴール左上に突き刺さっていた。GKは一歩も動けなかった。

「あそこは行くしかないと思いながら打ったらゴールになって、すごくうれしかったです」

 行くしかない、の明晰な判断が快哉につながった。

 これをきっかけにたたみかけたかったが、大量のチャンスは作るものの決めきれないもどかしい展開になる。マルコス・ジュニオールが追加点を挙げながらPKで1点差に詰め寄られる流れになったが、相手が息切れするのに合わせるように仲川輝人の追加点と、オナイウ阿道のシュートがポストを叩いてGKに当たって入るオウンゴールで、終わってみれば4-1だった。

 振り返れば前半、左サイドの活性化が相手の戦意を喪失させた。サイドバックのティーラトン、ボランチの扇原貴宏、ウイングの高野遼の「トリオ・ザ・レフティー」の関係がその原動力だ。特に高野との縦関係で、ティーラトンは確かな手応えを感じている。2人ともサイドバックでもウイングでもプレーできるから、分かり合える。

「同じポジションの選手だから、考えていることは同じだと思います。高野は今日は一つ前のウイングでしたが、自分がやるなら同じことを考えると思います。試合ごとに関係が良くなっている手応えを感じています。高野選手はスピードと推進力があって、似たスタイルなのでやりやすいんです」

「どういう選手、どういう相手でも、自分たちのサッカーができればいい結果になります。誰が出ても良いサッカーになるようにしたい」

 そんな左の連係を軸にゲームを作って、横浜F・マリノスとして初めてのグループステージ突破。ティーラトンも「歴史」の一人になった。

「勝利はとてもうれしいです。目標であるグループステージ突破を、自分たちのサッカーで勝利で果たせて、とてもいい流れに持っていけるんじゃないかと思います」

 相手にとっての悪魔は、もちろん横浜FMにとっては天使。

「残り試合すべて勝てるようにしたいと思います」

 左の翼は、最高の高みに登るつもりだ。