大分トリニータのGK高木駿はその持ち味を存分に発揮して川崎フロンターレ戦の勝利に貢献した。目の前での優勝を阻止した格好となったが、試合後には自身の中の複雑な心境とお世話になった先輩への感謝を口にした。

上写真=安定したプレーぶりで川崎F戦の勝利に貢献した大分のGK高木駿(写真◎Getty Images)

■2020年11月21日 J1リーグ第28節(@昭和電ド/観衆9,820人)
大分 1-0 川崎F
得点:(大)野村直輝

悠さんには「イエーイ」と(笑)

 ビルドアップの局面ではしっかりパスワークに参加して攻撃を組み立て、守備でもディフェンス陣の中心として失点を防いだ。優勝のかかった川崎F相手に、大分が持ち味を存分に出せたのは、最後尾に位置する高木が安定したプレーを披露したことも大きかった。

 そして大分は、野村直輝がPKで挙げた1点を守り抜き、1-0の勝利を飾った。

「準備してきたことが表現できたと思う。気持ちの部分で戦えていたし、自信になると思います」

 高木はそう言って胸を張った。後半は押し込まれる展開となり、再三、ピンチに見舞われた。69分にはボックスに進入された登里享平に至近距離からシュートを許す。しかし、コースを見極めてキャッチ。85分には相手CKの場面で迷わず前に出てパンチングでシュートを防ぐなど、最後の最後まで集中した守備を披露した。

「優勝されたくなかったのでしっかり勝ててよかったです。ただ、自分の中では、ちょっとだけ複雑な気持ちはありますけど。もちろん大分の人間なので来てくれたサポーターに喜んでもらえる結果になってよかったですが」

 川崎Fは高木にとって古巣だ。2012年から16年まで在籍した(14-15年は千葉へ期限付き移籍)。試合後には明治大加入した当初、自身がルーキーだった頃のエピソードも明かした。

「試合が終わって、みんなが帰る前に(中村)憲剛さんとは長いこと話しができました。僕が1年目のとき、最初のキャンプの部屋が憲剛さんと(小林)悠さんと同じでした。もう1人は長澤和輝(現浦和)で練習生で来ていました。『あそこから僕のサッカー人生始まりました』と憲剛さんに伝えて。家族づき合いさせてもらって感謝もを伝えました。悠さんも子ども生まれて出産祝いを送ったんですが、そのお返しに『点を取るよ』と言われていたんですけど、防いだので、『イエーイ』と言っておきました(笑)」

 プロキャリアをスタートしたクラブとこのタイミングで当たり、お世話になった先輩と全力で戦い、そしてチームにとって大きな勝利を手にした。格別な思いとともに、少し複雑な思いを抱くのも無理はない。

「もう、そのうち優勝できるとは思うですけど、憲剛さん、悠さんには、もちろん勝ちにはいきましたけど、自分の中の変な心境で、サッカーには関係ないけど、終わってからは『すんません』みたいな感じでした」

 チームにとって価値のある1勝は、高木個人にとって思い出に深く刻まれる勝利になった。