上写真=大島僚太は谷口彰悟からキャプテンマークを託され、中盤の中央からコントロールした(写真◎J.LEAGUE)
「今日勝って決めたかったので残念です」
勝って自力優勝を果たしてシャーレとともに川崎に帰る、という物語は、完結しなかった。
J1第28節の大分トリニータ対川崎フロンターレは、優勝のかかったクライマックス。川崎Fは勝てばその時点でチャンピオンの座に就くことが決まるから、鬼木達監督以下、選手、スタッフ、そしてサポーターの勝利へのこだわりはいつも以上だった。
「すごく残念ですし、優勝を目指してやってきて、自分たちで勝てば決められることに対してモチベーションはとても高かったんです。結果として勝てなくて残念です」
大島僚太もそう静かに振り返る。
34分の出来事がきっかけになって、試合の流れが大きく変わったのは間違いない。裏に抜け出した大分の野村直輝に入れ替わられるところで谷口彰悟が手で引っかけて倒してしまい、PK。「得点機会阻止(他)」として谷口に退場処分が下された。
PKを野村本人に決められて、1人少なく1点のビハインドのまま残り時間を戦うことになった。
大島が悔やんだのは、この34分までのプレーだった。
「10人になってからはやり方うんぬんということではない部分もありますからなんとも言えませんが、そこに至るまでの過程が良くなかったがゆえに、チームとして退場者を出すきっかけになってしまったと思うので、そこに目を向けて次は勝ちたいと思います」
前半から珍しくボールが足につかず、得意のボールローテーションもままならない。大分のプレッシャーも激しくて、キックオフからリズムを奪われて取り返せないままだった。
「バタつく時間も多々ありましたし、ピッチを言い訳にするわけではないですけど、個人個人が早く対応しなければいけなかったと感じました。そこに至るまでのチームとしてのやり方の部分は、もう少しピッチの中で整理できればなとは思います」
10人になったことだけが敗因ではない、ということだ。26分頃の前半の飲水タイムには、劣勢をはね返すべく「少し守備のときの立ち位置や追い方のところは修正はしました」という。しかし「そんなにばっちりはまったかというと、うまくはいかなかったと思いますし、結果的にそういうところが出てしまったかと思います」。悪い流れのまま、34分の退場劇を迎えることになった。
ただ、後半は押し込んだ。4-3-2のような形に整え、失点を防ぎながらも、攻撃への圧力を増す戦い。前節の横浜F・マリノス戦で相手が1人退場したあとでも4-3-2で攻めに出てきていて、その経験が逆の立場として生きた格好だ。
「1人少なくなったので、ポジションや立ち位置については、僕は真ん中にいて、周りが自由にいい距離感を持ってプレーしていたので、相手のプレッシャーをうまくかいくぐれるきっかけになったかなと思います」
大島も中央に構えてどこにボールがあってもいつものようにたくさん触って、動きに強弱をつけていった。81分には左寄りの背後のスペースに田中碧を目掛けてきれいなミドルパスを送り、95分には右サイドで展開している間に中盤の中央から右裏までロングラン、ゴールラインぎりぎりのところからファーの三笘薫を狙ってクロスを送り込んだ。
その攻撃も実らないまま黒星を突きつけられたものの、11月22日に暫定2位のガンバ大阪が浦和レッズに引き分け以下の結果になれば、川崎Fの優勝は決まる。
「今日勝って決めたかったので残念ですが、(G大阪の結果次第でも)優勝できるならうれしいです。チームとして優勝を目指してやってきて、積み重ねの部分があるので決まれば素直に喜びたいと思います。それに、すぐガンバ戦があるので、この悔しさをぶつけて勝てればと思います」
次戦11月25日のG大阪戦はホームゲーム。浦和対G大阪戦の結果がどうなろうと、次の試合に勝つというこれまでと同じ物語を書き続けていくだけだ。