明治安田生命J1リーグで首位を独走する川崎フロンターレ。あとは確実にゴールテープを切るだけだが、もちろんそんなに簡単ではない。さまざまな刺激を加えながらまた一歩進化する姿を、まずは鹿島アントラーズ戦で試される。

上写真=センターフォワードで練習した楽しさを話すときはこの笑顔だが、鹿島戦に話題が移るとぎゅっと引き締まった(写真◎スクリーンショット)

「すごく新しい発見でした」

 田中碧が……センターフォワードの位置に入った?

 前節で北海道コンサドーレ札幌に0-2で敗れて今季2敗目を喫し、次節の鹿島アントラーズ戦まで「中10日」となったある日の練習のこと。鬼木達監督は選手たちをいつもとは違うポジションでプレーさせるゲーム形式のトレーニングを実施した。田中が入ったのがセンターフォワード。

「違うポジションでプレーすると、いつも自分がやっているポジションにはこんなことをしてほしいと感じることがありました。声掛けを含めていい方向につながっていて、より意見し合えるいい関係になりました」

 10連勝と12連勝を記録して、いわば「勝ち慣れ」している選手たちにはいい刺激になったようだ。

「センターフォワードでやりながら、普段後ろからこういう風にやってほしいと思っていることが難しいんだな、とか、実際にやってみて感じることが多かったですね。自分より前の選手に指示するときに伝えていることも、そう簡単にできるものではないんだな、と。そういう確認作業ができたので、ためになりました」

 その難しさ、もっと具体的にはこうだ。

「普段、後ろから見ていて、(レアンドロ・)ダミアンとか(小林)悠さんに、相手のアンカー(のコース)を切りながら守備をしてと言っているんですけど、自分でやったらアンカーは切れてもセンターバックが切れなかったり、センターバックを切ったらアンカーを切れなかったりで、自分で見えていることから想像するようには簡単ではなかったと感じましたね」

 逆に、センターフォワードの立場からいつものインサイドハーフのポジションを見つめるということも経験した。

「もっとやってくれって自分でも思いましたけど、実際にやってみるとどのポジションでもそうですけど、やっているつもりでもやられたり、逆にちょっとステイしている間に行かれたりしていて、そういう部分は感じましたね。それはすごく新しい発見でした」

 これで、実戦の場で突然、センターフォワードにコンバートされても安心?

「そうですね、クロスに入ることはすごく意識してましたよ」と笑うが、鬼木達監督は「碧のセンターフォワードはないですけど」と宣言(?)しているので大丈夫。

 頭に心地よい刺激をもらえたこの期間で、前節の敗戦の悪いイメージも払拭できた。ここから4連戦になるが、いよいよ優勝をつかみ取るその瞬間に向かっていくことになる。「この4試合のサイクルはすごく大事です。相手どうこうよりも自分たちがフォーカスしてやるべきことをぶらさずにできればいいと思います」と引き締める。

 これまでは連勝記録がかかっていたり、1試合3ゴールがノルマと言われたりと、戦いぶりに派手なイメージもあったが、それだけではないと田中は真剣な眼差しで言う。

「ここから残り8試合、どのチームも勝ち点3を取りに必死に来ますし、そう簡単ではないと思います。最後の10分を守り切らなければというようなゲームは増えてくると思うので、まずは鹿島戦にしっかり勝てればいいと思っています」

 華麗で軽やかで、とは違う泥臭さ、勝負に徹するふてぶてしさが試される。その最初の相手が、そんな戦いを大の得意としている鹿島だというのが、どこか暗示的ではないだろうか。優勝したければ、オレたちを倒してから行け。鹿島がそんな風に立ちはだかっているように見える。

「球際のバトルの部分はなかなか数字に表れないですし、目に見えるものではないですけど、非常に大事です」

「流れが良くなくてもロングパス一本で点につなげてしまうのは、鹿島のすごい武器だと思います。だから、自分たちが前から奪いにいくことがいいのか、セットしてボールを持たせた方がいいのかの判断は重要になります。コンパクトにしていければセカンドボールを拾えなくても時間を与えることはないので、その部分は肝ですね」

 激戦必至。優勝へのファイナルカウントダウンは、11月14日17時にカシマスタジアムでキックオフだ。