上写真=伊野波雅彦はベテランならではの視点からチームを鼓舞していく(写真◎Getty Images)
「勝負の分かれ目でどういう選択をするか」
チームは生き物で、成長するには時間がかかる。伊野波雅彦はベテランならではの視点で、若く可能性の塊である横浜FCのいまを、「第2段階」だと感じている。
「下平監督がやろうとしているサッカーは、第1段階でボールを保持しながら進めるというところは、勝てない状況の中でもチームとして成り立ってきていると思います。そこから勝負に勝つことに関してが第2段階のところで、いま壁にぶち当たっている状況だと思います」
伊野波自身も「自分たちができるのか不安があったけれど」と明かすのだが、「そこから一つ階段は登ったと思っています」と自信が生まれている。
第2段階のいま、乗り越えるべき壁は何なのか。
「ケガ人も多くて、松尾(佑介)がいなくなったのはチームとして痛いですね。個で突破できる選手がなかなかゲームに出られる状態ではなかったりケガだったりで、うちのポイントだった部分が消えてしまっています。ただ、他の選手にチャンスが来ているので、それぞれの特徴をうまく出していくことが必要かなと思いますね」
前節の大分トリニータ戦は伊野波は出場していないのだが、2点を先行しながら逆転負け。これも一つの壁だろう。リードをうまく利用しながら時間を進めるゲームマネジメントが問われている。
「2-0の状況でどうやって進めるか、あるいはその前の湘南戦で0-1とされてからどう取り返すのか。もちろん監督も大事ですけれど、試合に出ているメンバーで理解してやっていくことが次への課題かなと思います」
10月10日の鹿島アントラーズ戦でも同じように2-0から2-3と逆転されている。
「鹿島戦のときは5バックにした瞬間に、チームとして5枚で守るという意味合いで選手はとらえていて、守りきれればOKでしたけど、3点入れられて負けてしまったので…。重要なのはそれを11人が把握して共通理解を持てるかどうか。その部分では例えば5人はそうやろうとしていても5人はそう考えてなかったり、ちぐはぐさじゃないですけど、そういうところを解決していくのがこれからの課題です」
成長過程にはよく言われる「意識の分断」がいま、横浜FCに起こっているということになる。だが、これを乗り越えれば明るい未来があることを、伊野波はその経験から知っている。
「最初はこのサッカーで勝てるのかという疑いが少なからずありましたけど、今季自分たちでボールを持てたり主導権を握れると気づいてきたと思うんです。このやり方を貫くというか、臨機応変さも大事だし、勝負の分かれ目でどういう選択をするか、そこでまとまれるかが重要でポイントになると思います」
それが試されるのが、次節のヴィッセル神戸戦だ。伊野波にとっては古巣戦。3連敗中と苦しいが、堂々と向かっていくだけだ。