明治安田生命J1リーグ第31節では、Jリーグで唯一開幕から続く横浜F・マリノスと鹿島アントラーズのカードが「ザ・クラシック」と名づけられて行なわれた。悔しい逆転負けを喫した水沼宏太の言葉からは、迫真の責任感がにじみ出た。

上写真=自身の先制点のほか、エリキの追加点にも絡んだ水沼宏太。逆転負けに悔しさを隠さなかった(写真◎J.LEAGUE)

■2020年11月3日 J1リーグ第31節(@日産ス:観衆20,515人)
横浜FM 2-3 鹿島
得点者:(横)水沼宏太、エリキ
    (鹿)上田綺世、エヴェラウド、遠藤康

「一瞬のスキを見せてしまった」

「悔しくて」の気持ちが、言葉からも、表情からも、全身からもあふれ出てくる。水沼宏太は「チームを勝たせるプレーヤーにならなければいけない」と、鹿島アントラーズに食らったまさかの逆転負けによって改めて強く思うのだった。

 前半は順調だった。小池龍太とエリキのコンビネーションで左を破ると、小池がセンタリング、突っ込んできた水沼が相手の前に体をねじ込むようにして右足でボールを流し込んだ。17分の先制ゴールだ。水沼にとっては今季、「再移籍」してきてホームでは初めてとなる記念の一発だったから、倒れたまま両手を天に突き出して歓喜の雄叫びをあげた。

 Jリーグ開幕から唯一、対戦が続くこのカードを「ザ・クラシック」と銘打ったゲーム。父・水沼貴史も開幕当時から横浜マリノスでプレーしているだけに、その歴史を体現する象徴として、息子である宏太のこのゲームでの活躍は何よりふさわしかった。

 10分後には、カウンターから右サイドに出て受けた水沼が中央に送ったところから、エリキの追加点につながった。余裕の試合運び、と思いきや、終わってみれば2-3の逆転負け。特に後半は鹿島のパワーをいなせずにナイーブに受けてしまった格好で、ほとんど攻めることができずに、ただただ鹿島の攻撃をはね返すばかり。

「90分を通して勝ちたい気持ちを、一人ひとりが前面に出しきれなかったところだと思います。勝つために何をしなければいけないか、審判ではなくて自分たちに矢印を向けないといけないんです。それを狙っているのが鹿島で、一瞬のスキを見せてしまったと思います」

 メンタル面での反省が口を突くが、鹿島の戦略に対抗できなかったことも敗因として認識している。

「こちらの距離感が良くなくて、鹿島はシンプルに前に蹴ってきてセカンドボールを拾うやり方を徹底してきました。こちらがセカンドボールを拾っても、一つ目、二つ目をつなぐことにフォーカスしてやれればもっともっと前に持っていくチャンスもあったと思います。そこで引っかかって、相手の2次攻撃、3次攻撃で体力を奪われてしまいました」

「鹿島は、相手にとって何が嫌なのかということを徹底してきました。逆に僕たちは自分たちのサッカーをやり続けられなかったことが課題です。前半良かった時間はかなりあったので、1試合を通したゲームマネジメントを意識してできなければ」

 責任感と男気の塊のような男だから、「期待してくれるファンやサポーターの皆さんに恥ずかしくないようなプレーをしなければ。応援してくれていることに、もっともっと感謝の気持ちと責任感を持ってやっていきたいです」と唇をかんだ。

 アジア・チャンピオンズリーグに出場するため、J1の残りは4試合。ホームゲームは11月14日の浦和レッズ戦を残すのみとなった。

「スタメンで出ようがベンチから出ようが、僕は結果を出して信頼を残さないといけない立場です。勝たせるプレーヤーにならないといけない。とにかく悔しくてしょうがないので、次にチャンスがあったら責任感を持って戦いたいと思います」

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE