11月3日、明治安田生命J1リーグ第26節が開催された。等々力陸上競技場では川崎フロンターレと北海道コンサドーレ札幌が対戦。敵地に乗り込んだ札幌がアグレッシブな戦いを披露して2-0で快勝。首位を独走する川崎Fの連勝を12で止めた。

上写真=積極的なプレスで守備のスイッチを入れ、ビルドアップに関わり、ゴールも決めた札幌の荒野拓馬(写真◎J.LEAGUE)

■2020年11月3日 明治安田生命J1リーグ第26節(@等々力/観衆11,165人)
川崎F 0-2 札幌
得点:(札)アンデルソン・ロペス、荒野拓馬

・川崎Fメンバー:GKチョン・ソンリョン、DF山根視来、ジェジエウ(70分:登里享平)、谷口彰悟、車屋紳太郎、MF守田英正、脇坂泰斗(46分:田中碧)、旗手怜央(46分:三笘薫)、FW家長昭博、レアンドロ・ダミアン(70分:宮代大聖)、齋藤学(70分:中村憲剛)

・札幌メンバー:GK菅野孝憲、DF田中駿汰、キム・ミンテ、福森晃斗、MF金子拓郎(77分:白井康介)、宮澤裕樹(89分:早坂良太)、高嶺朋樹(61分:アンデルソン・ロペス)、ルーカス・フェルナンデス(89分:石川直樹)、駒井善成、チャナティップ(61分:ドウグラス・オリヴェイラ)、荒野拓馬

後ろを同数で守るのはクレイジーかもしれないが…

 札幌が首位を独走する川崎Fを止めた。高い位置で人を捕まえて首位チームの自由を奪うと、攻撃では幅と深さを取り、相手を押し込んだ。前半はポゼッションで上回り、試合開始から次々と決定機をつかんでいった。

 2分、チャナティップのシュートはGKの正面を突き、左から崩してチャナティップが通した4分のクロスは駒井に合わなかった。5分にはルーカス・フェルナンデスのシュートは相手GKに防がれた。札幌の1トップ+2シャドーがゴール前を空けてビルドアップに関わり、再びゴール前に入っていく『循環』が効果的で、川崎F守備陣を混乱させていた。川崎Fからすれば中を締めれば、外が空き、外をケアすれば中を使われる状態。その上、ボールを持ってもビルドアップを阻まれる。

 22分には福森のアーリークロスに荒野が飛び込み、あわやのシーンを作る。前半のシュート数は川崎Fの3本に対して札幌は6本と倍。結局前半はゴールを奪えず、ハーフタイムを迎えることになったが、最初の45分は札幌優勢のまま終えた。

 ペースを握っていた時間帯に点を取れなかったことで、後半に強い川崎Fの流れになるかとも思われたが、札幌は前半同様に人を捕まえ、前からプレッシャーをかけるアグレッシブな戦いを継続する。後半開始から三笘と田中を投入した川崎Fに対しても、反撃するスキを与えなかった。

 そして62分、札幌にとって待望のゴールが生まれる。荒野が田中に寄せて、守田にボールを下げさせると、そこへ駒井が襲い掛かった。見事にボールを奪い、交代出場したばかりのアンデルソン・ロペスにつなぐ。A・ロペスは谷口を右腕で押さえながら突進し、左足でネットを揺らした。狙っていたハイプレスからのショートカウンターが見事に決まった。

 さらにその3分後のことだ。またもハイプレスからショートカウンターという展開でゴールを奪い取る。家長から田中にバックパスが出た瞬間、荒野とA・ロペスがプレッシャーをかけてボールを奪い、A・ロペスが中央を持ち上がって左サイドをフリーで走っていたドウグラス・オリヴェイラに展開。D・オリヴェイラが中央へ折り返すと、ボックス内に走り込んでいた荒野が冷静にゴールへ流し込んだ。

 3分間に2ゴールを挙げてリードを奪った札幌は、その後も集中した守備を見せる。川崎Fも中村、登里、宮代を同時投入して反撃に出るが、GK菅野を中心に守り切り、最後までゴールを許さなかった。2-0。今季、難攻不落だった敵地・等々力陸上競技場で札幌が見事な戦いぶりを披露し、価値ある勝利を手にした。

「過去の試合を振り返っても自分たちには十分にできる部分があると思って臨んでいた。前からプレッシャーをかけてアグレッシブにボールを奪いに行く。奪ったところで自分たちがボールを支配する。そういう戦いを狙いとしていた。守備ときは時として後ろを同数で守るような、非常にリスキーな戦い方だ。個の能力に秀でた川崎Fに対して、後ろを同数で守るのは少しクレイジーな部分があるかもしれないが、選手たちは規律をもって最後までアグレッシブに戦ってくれた」

 ミハイロ(ミシャ)・ペトロヴィッチ監督はそう言って胸を張った。まさしく、会心の勝利。マンツーマンとハイプレスで積極的にボールを狩り、相手のゴールに殺到していく戦い方は、これまでも継続してきた。ただ、その積極性が裏目に出て勝利につながらないケースも多かった。しかし、この日、12連勝中の首位・川崎F相手に堂々と勝ち切ったことで、あらためて進む方向の正しさを証明することになった。

「勝利に値するゲームができたと思う」

 残り7戦。首位撃破の自信を携えて、ミシャ・コンサドーレは信じる道を進んでいく。

現地取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE