上写真=11月2日、トレーニングを行なう土居聖真(写真◎KASHIMA ANTLERS)
攻撃面の課題。「頼りすぎてしまうと、停滞する。それは良くない」
前節は名古屋を相手に、痛恨の1敗を喫した。リーグ戦の終盤戦で、上位を争うライバルにホームで完封負け。優勝の望みは完全に潰え、天皇杯に出場するための2位、あるいは来季のAFCチャンピオンズリーグ出場権が与えられる3位の座からも遠ざかった。
「前節も“1勝の重み”をすごく感じました」。土居聖真は険しい表情を浮かべ、そう語る。
翌11月3日には、当初は12月に組まれていた横浜FMとの試合(第31節)が前倒しで開催される。前年王者との対戦を前に、「負けたり、うまくいかないからといって、急に何かを変えることはしない。僕らのサッカーをもっとやっていこう」とザーゴ監督がチームを鼓舞していることを明かし、土居も「2位、3位に入っていくために、本当に負けられない試合が続きます。うちもそうですけれど、他のチームも結構、(勝ち点差が)団子状態なので、一戦一戦が大事になってくる」と言葉に力を込める。
土居は長く鹿島の前線でチームを引っ張る「バンディエラ」とも呼べる存在。今季チームに加わったエヴェラウドとともに、守備ではハイプレスの先鋒隊となり、攻撃ではチームを勝利に導くゴールを狙う。前節の名古屋戦を含め、今季のリーグ戦10敗中9敗が完封負け(1敗は第2節川崎F戦、得点はオウンゴール)だっただけに、横浜FM戦からの残り7試合では、勝利を重ねていくために攻撃陣の奮起が求められる。
2トップを組む相棒のエヴェラウドは、ここまで13得点を挙げている。「ここ数試合はちょっと(攻守においての)距離感を感じています」と言うが、「言葉がなくても(互いにプレー中の狙いが)分かってきたというか、感じられるようになっている。周りの選手も彼の特徴だったり、彼の活かし方の共通認識を持ち始めてきたからこそ、得点を量産できている」と、コンビネーションやチームワークでの手応えをつかんでいるようだ。
「でも、頼りすぎてしまうと、彼が仕事をできないときにチームとして停滞する。それは良くないことなので、自分ももっと手助けできるようなプレーだったり、行動、発言というのを、もっともっと(チーム内で)促していければと思っています」
「もっと彼に関わること。僕が一番近いポジションにいるので、2人での何気ないパス交換だったり。もっともっと(連係を)良くできると感じています」
明日のアウェー横浜FM戦、そしてホームに戻る1週間半後の川崎F戦と、強敵との対戦が続いていく。サポーターの試合観戦時の制限も徐々に緩和され、前節の名古屋戦では太鼓などの鳴り物による応援が解禁された。土居にとっては慣れ親しんだ“音”が、ようやくカシマスタジアムに戻ってきたことだろう。
「やはり、雰囲気というのは少し出ていました。まだ100%(コロナ禍以前の状態)に戻ったわけではないけれど、そこに少しでも近づいたのは、選手としてはすごくありがたい環境です。(試合にサポーターの)応援や声援が加わってくると、選手にとってはすごくモチベーションにもなります。Jリーグとしても、また今までの公式戦に近いような環境に戻れるんじゃないかなと。僕個人としても、もう少しで(以前のような)雰囲気が戻って来るなという感覚はすごくありました」
中学生のときに鹿島アントラーズの門を叩き、その地でずっと、ディープレッドのユニフォームをまとって戦い続ける。苦しい時期もあった2020年シーズンも、土居聖真は最後まで、勝利を目指して走り続ける。