10月28日、明治安田生命J1リーグ第30節が開催された。ユアテックスタジアム仙台ではベガルタ仙台とヴィッセル神戸が対戦。前半は0-0だったが、後半は点を取り合う展開となり、クロスから3ゴールを挙げた神戸が勝利を手にした。

上写真=神戸の渡部と仙台の長沢が空中戦で激突!(写真◎J.LEAGUE)

■2020年10月28日 J1リーグ第30節(観衆4,071人/@ユアテックスタジアム仙台)
仙台 2-3 神戸
得点:(仙)長沢駿、飯尾竜太朗
   (神)古橋亨梧、郷家友太、ドウグラス

・仙台メンバー◎GKヤクブ・スウォビィク、DF飯尾竜太朗、金正也、平岡康裕、パラ、MF浜崎拓磨(69分:中原彰吾)、椎橋慧也(84分:田中渉)、関口訓充(69分:佐々木匠)、イサック・クエンカ(58分:石原崇兆)、FW長沢駿、山田寛人(58分:アレクサンドレ・ゲデス)

・神戸メンバー◎GK飯倉大樹、DF西大伍、ダンクレー、渡部博文、酒井高徳、MFセルジ・サンペール(82分:安井拓也)、山口蛍、郷家友太(66分:佐々木大樹)、藤本憲明(66分:田中順也)、ドウグラス、古橋亨梧(90+2分:小川慶治朗)

やろうとすることができた(三浦監督)

 前半は互いにチャンスをつかみながらも決め切れずに迎えた後半。早々の47分に神戸がゲームを動かした。左サイドでボールを持った左サイドハーフの古橋がボックス左隅付近まで進出し、インスイングのボールをゴール前に送る。誰かが触れば得点が生まれるようなクロスはしかし、誰に触れることもなく、相手GKヤクブさえ触ることができないまま、ゴールに吸い込まれた。

 ついに先制点を奪った神戸は4分後に仙台を突き放す。今度も左サイド、しかも古橋からだった。

 1点目と同じようにボックス左サイド隅付近でボールを持った古橋が右足でインスイングのボールを入れると、仙台のDFパラの背後から郷家が飛び込み、ゴールに押し込んだ。仙台のGKもDFもボールをキャッチできると一瞬、考えたかもしれない。視野の外から神戸の背番号27が飛び込むことは想定していないようにも見えた。

 14試合勝ち星なし、という苦しいチーム状況が選手を消極的にするのだろうか。二つの失点場面では仙台の選手たちのアプローチが甘く、同じような形で古橋のボールを入れさせてしまった。

 だが、この日の仙台は失点をただ悔やんだまま、ゲームを終えることはなった。ここから見事に反攻してみせる。関口が敵陣深い位置でサンペールのクリアに足を出してブロックすると、そのこぼれ球がゴール前の長沢のもとへ届き、キャプテンマークを巻くストライカーが迷わずシュート。2失点目を喫した2分後に1点を返した。諦めない姿勢と粘りが、ゴールにつながったシーンだった。

 5試合ぶりの得点を記録し、仙台の選手たちは、よりアグレッシブになる。逆に神戸の選手たちは受けに回ってしまう。76分に仙台は左CKのチャンスを得て、途中出場の佐々木がキッカーを務めた。一度は神戸守備陣に跳ね返されるが、跳ね返りが再び佐々木のもとへとつながり、再度、クロスを入れる。ボールはニアサイドの長沢を越え、ゴール前に頭から飛び込む飯尾にピタリと届いた。

 仙台はゲームを振り出しに戻し、さらに逆転を目指して押せ押せムードになった。しかしながら、追い付かれた神戸はまったく慌てていなかった。それまで受けに回っていたのが嘘のように、ギアを入れて、前に出る。失点直後の77分だった。左サイドから古橋がクロスを入れ、そのボールを田中が後方に落とす。佐々木、サンペールとつないで、右に展開。タイミングよく上がっていた西がクロスを入れると、相手DF金と競り合いながらもドウグラスがヘッド。ゴール左隅にシュートが決まり、神戸が瞬く間に勝ち越しに成功した。

 仙台からすれば、ギアを入れ、15試合ぶりの勝利に向かって前がかりになっていた時間。心を折られるような一発だったと言っていい。人数は足りていた。マークにもついていた。しかし、ボールをつながれて決められた。負のサイクルを脱するのは、これほどまでに難しいのか。仙台も最後の最後までゴールを目指したが、3点目を手にすることはできなかった。

「最後はハラハラする展開でしたが、90分を通してわれわれがやろうとすることはできたと思います。この難しい試合をしっかりと勝ち切ったことは次につながる。4-4-2は初めてのトライでしたが、いところがたくさん出たと思います。背後への飛び出しやサイド攻撃、クロスから点を取るというトレーニングしてきましたが、それが結果につながってよかった」

 神戸の三浦淳寛監督は狙いどおりの勝利だったと試合を振り返った。一方、仙台の木山隆之監督は「粘りをしっかり出しながら前半ゼロで折り返して後半勝負というところで、すぐに2失点しました。ですが、盛り返していくスタンスを選手たちは出せた。そこはよかったと思っています。ただ3失点目は追いついた後すぐだったので、悔しさが残ります」と思いを吐露した。

 試合後のピッチには勝者と敗者のコントラストがくっきりと浮かび上がった。喜ぶ神戸の選手たち。その傍らでは仙台の選手たちがうなだれ、肩を落とした。この結果、神戸は敵地でのゲームながら未勝利を4試合で止め、そして仙台は未勝利を15試合に延ばすことになった。