横浜F・マリノスが敵地に乗り込んで臨んだJ1第28節のFC東京戦で、FWジュニオール・サントスが破格の活躍を披露した。先制点を含む2ゴールをスコアし、守備面でも貢献。勝利に立役者となった。

上写真=アウェーまで応援に駆けつけてくれたファン・サポーターの前でご覧の笑顔を見せるジュニオール・サントス(写真◎J.LEAGUE)

■2020年10月24日 J1リーグ第28節(観衆9,518人/@味の素)
FC東京 0-4 横浜FM
得点:(横)ジュニオール・サントス2、OG、エリキ

17試合で10ゴールをスコア

 ジュニオール・サントスは、試合の流れを引き寄せる重要なゴールを挙げ、相手の心を折る得点も奪った。4-0とFC東京に快勝したゲームのマン・オブ・ザ・マッチは文句なしで、今季途中に加入したこのストライカーだろう。

 相手ペースで進んだ前半を0-0で終えて迎えた後半早々の54分。横浜F・マリノスはゴールキックから前線まで素早くボールを運ぶ。マルコス・ジュニオールを経由して右サイドのエリキへボールが渡ると、ジュニオール・サントスは相手ボックス内に進入を試みた。

 小川諒也と森重真人にマークをに付かれながらもエリキがボールをゴール前に入れる。そこには仲間を信じて準備していたJ・サントスがいた。渡辺剛に当たられながらも体勢をキープして、前進。強靭なフィジカルを見せつけて左足を振り、ネットを揺らしてみせた。

「1点目はエリキのサイドからの個人技でボールをもらって、相手DFに競り勝ってGKの位置を見て冷静に流し込めました」

 試合はここから一気に横浜FMペースになっていく。そして2分後に決定的な2点目を記録した。

 右サイドでエリキがボールを失った直後だ。ネガティブトランジション(攻撃から守備への切り替え)の局面で、横浜FMは即時奪回に動いた。連動したプレスでボール奪取を狙うと、田川亨介の保持するボールを伊藤槙人がつつき、そのこぼれ球が前田大然、M・ジュニオールとつながった。パス・アンド・ゴーでボックス内に走り込む前田にM・ジュニオールから再びパスが出ると、FC東京のCB渡辺に一度はクリアされるが、ボールは森重に当たって、J・サントスのもとへと転がった。

 先制点を記録したストライカーは、冷静だった。キックフェイントで眼前のDFのタイミングを外してから即座に左足を一閃。見事にネットを揺らしてみせた。

「マルコスが狙ったスルーパスが相手に当たってボールが僕の前にこぼれてきて、キックフェイントでディフェンダーと駆け引きして冷静にシュートを打てました」

 FC東京の安部柊斗が「1失点後もまだまだ行ける感じでしたが、2失点目をすぐに取られて、ガクッとなった」と話したように、この2点目が大きかった。まさに値千金の仕事ぶりだが、本人はあくまでチームの勝利であると強調した。

「2点を決めたことはすごくうれしいのですが、今日の試合はみんなのハードワークがとても良かったと思います。個人的な話をすると、2ゴールする前に僕が中盤でボールを失って危ないシーンがありました。そこで諦めず相手を追いかけてボールを奪った。そういうプレーが今日は出ていたし、そういう姿勢がチームの強みになると思います。得点はうれしいですが、そういうみんなの強い気持ちが出ていた試合でした」

 J・サントスが言及したのは、52分のシーンだ。左サイドで高い位置を取ったティーラトンからのパスをダイレクトで後方に下げた。だが、あろうことかディエゴ・オリヴェイラにボールを渡してしまう。ハーフウェーラインを越えて敵陣まで上がっていたCB畠中槙之輔もかわされて、絶体絶命のピンチを迎えることになってしまった。

 ただ、パスをミスした瞬間からJ・サントスは全速力で走り出していた。ぐんぐん加速し、自軍のボックス手前でD・オリヴェイラをとらえる。体を投げ出すようにスライディングして右足でボールをつつき、何とかCKに逃れた。自分のミスを回収した形だが、「諦めずに追いかけた」ことで失点は免れたのだった。

 諦めずに戦う姿勢がこの日の横浜FMにはあり、勝利への執着心も並々ならぬものがあった。それが自身のプレーを導いたとJ・サントスは言った。

 この日の2得点で10ゴールの大台にも乗ったが、本人は「こういう早さで10点を決められているのはうれしいですが、この場を借りて言いたいのは、自分をピッチに出す機会を与えてくれたことへの感謝です。僕のサッカーを見せる機会を与えてくれて感謝しています。監督、コーチングスタッフ、チームメイト、ファン・サポーターのみなさん、F・マリノスに関わるすべてのみなさんのおかげだと思っています」と、何度も感謝の思いを口にした。

 柏レイソルで出番に恵まれず、出場機会を求めて加わった横浜FMで即、自分の力を証明できたのは、サッカーに真摯に向き合い、チームファーストを貫くその姿勢があればこそだろう。横浜F・マリノスのために全身全霊を捧げる背番号37は、残り6試合も同じ思いを胸に、変わらぬ姿勢でピッチに立ち、勝利を求めて戦うことを誓っている。