上写真=中谷進之介は流れの中では川崎Fの攻撃を止めていたが、敗戦を冷静に振り返った(写真◎J.LEAGUE)
■2020年10月18日 J1リーグ第23節(@等々力:観衆10,161人)
川崎F 3-0 名古屋
得点:(川)三笘薫、ジェジエウ2
「僕たちが負けたことが残念」
もったいない、というのが、センターバックとして最後尾でチームを支えた中谷進之介の率直な感想だった。独走首位の川崎フロンターレを止めるべく臨んだ一戦。
「しっかりと勝ち点を取りたかったのが事実です。セットプレーでしかも3失点はすごく残念で、もったいないというのが一番の印象ですね」
44分の最初の失点は名古屋から見て左からのCKをニアで触られたあとに中央で押し込まれた。それまでは中村憲剛がキッカーだったが、このときは田中碧に代わっていた。
「対策はいつも前日のスカウティングで分析して対応しているのですが、中村選手から田中選手にキッカーが代わってやられてしまった。キックの質の違いを頭に入れてやらなければいけなかった」
57分の2失点目は、マッシモ・フィッカデンティ監督の「うちの選手に当たって入ったもので、運がなかった。準備を怠ったのではなく、準備してもミスはある」という言葉を待つまでもなく、不運だった。名古屋から見て中央やや右寄りのFKからのボールをジェジエウにヘッドされると、中谷の頭に当たってコースが変わり、GKランゲラックも逆を突かれた。3失点目も65分に右のショートコーナーからジェジエウにヘッドで送り込まれた。
前回の川崎Fの連勝を10で止めたのが名古屋グランパス。今回も川崎Fが10連勝中での対戦というめぐり合わせだった。あの勝利をもう一度、が応援する側の思いだ。もちろん選手たちもそうだが、記録のことは川崎Fの話であって、中谷と名古屋の選手たちにとっては「僕たちが負けたことが残念です」と唇を噛む。
実際に戦ってみて、川崎Fは「そこまで変わりはないけれど、整理されているな、とは思いました。連勝を続けているだけあって、もともとオートマチックですけどいままで以上にこっちの空いているところを狙ってきた印象です」と感じた。特に名古屋が守備から攻撃にかかるところでは、「三笘(薫)選手と家長(昭博)選手が予想通りにセンターバックを消しにきたので、サイドを使いたかったんですけど、使えませんでした」という反省が口を突いた。相手の両ウイングが絞るようにしてセンターバックのマークに来たが、それはつまり、もともといたサイドのエリアが空くということ。だが、「前回は田中選手が出てきていたのですが、今回はその2人が消しに来て、こちらも前田(直輝)やマテウスにボールを入れてもう少し崩せれば」と、川崎Fの意図の裏側を意識的に使えなかったことを悔やむのだった。
反省のもう一つは「相手の切り替えに押し込まれてしまった」ことがある。「前半の最初にいきなり押し込まれましたけど、あそこでもっとプレッシャーをかけなければいけない。そのほうが相手は嫌そうでしたし、そこはチームとしてやりたいことを実現すべきだったと思います」
キックオフ直後から三笘が得意のドリブルでこちらの右サイド深くまで入り込んできて、少し受け身になった。それがすべてではないが、押し込まれたことの象徴的なプレーとして中谷は指摘するのだ。
今季はセンターバックのパートナーの丸山祐市とともに全試合フルタイム出場を続けている。体を張るポジションで出場停止が一度もないのも素晴らしい。肉体的には厳しいだろうが、試合後の冷静な分析で分かるように、頭は冴えている。残りは11試合。一歩でも前へ、最後まで戦い抜くつもりだ。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE