明治安田生命J1リーグで川崎フロンターレが1シーズンで2度目の10連勝という偉業を達成した。次の相手は、前回の対戦で記録を止められた名古屋グランパス。いわば因縁の相手に、鬼木達監督は平常心と特別な思いを持って戦う。

上写真=名古屋も3連勝と好調。フィッカデンティ監督はもう一度川崎Fから勝利を奪うつもりだ(写真◎Getty Images)

リスクはあっても前から奪いにいく

 前回、川崎フロンターレの連勝を10で止めたのは名古屋グランパス。その後、川崎Fはシーズン2度目の10連勝を達成して、あのときに更新できなかった11連勝目を狙うタイミングで、再び両者が対戦する。そんな次節のシチュエーションは見る者を大いに引きつける。

 マッシモ・フィッカデンティ監督がこの試合を見据える視線は、明白だ。

「いろいろな期待を込めていただいた上で、唯一、リーグ戦で川崎に勝った名古屋と再び戦うと報道していただけるでしょうし、また勝ち続けている川崎が名古屋とこのタイミングで当たると話題になりやすい数字がたまたま重なって、そういう位置付けがされているのは分かっています」

「ただ、あくまで10連勝中の川崎とどう戦うか、という試合ではありません。私たちもいい形で試合ができていますし、1試合1試合サッカーの異なる戦い方ができなければいけないんだということを、準備の段階から選手たちが理解して取り組めています。いま我々が好調といえる取り組み方は、たとえ川崎相手でも続けないといけません。話題になっていることはいい形で力に変えるだけで、我々がやり方を変えるところまで影響を受けてはいけないのです」

 というわけで、平常心、である。最近の3連勝を含めてチームの力が上がってきているという自信の裏返しでもあるだろう。

「試合ごとという単位で見ても、試合の中のいろいろなシチュエーションで見ても、予想通りにいったり、あるいは予想しない流れで始まったりといろいろです。そういったさまざまな状況に対応できる対応力をいまチームとしてトレーニングしていて、それは試合の中でも見えていると思います」

「試合をどういう方向に持っていくかについても、今年すでに2度、リーグ戦とカップ戦で川崎と対戦する中で、自分たちの良さが出ている時間帯は川崎にとってはおそらくすごく嫌な感覚でその時間を過ごしていたのではないかという手応えはあります」

「ハイプレスに出ても引いて守っても、いろいろな展開でこのチームはプレーできるようになっているという感覚があります。そこで、川崎にこれをやらせてはいけない、我々はこれをやらなければいけないという部分を具体的に見ていくと、なるべく我々がゴール前にブロックを敷いた状態ではなく、リスクはあっても前から奪いにいくことです。川崎の陣地でボールを持たれていても怖くはないと思いますし、逆に我々が自分たちの陣地で最終ラインだけで回していても相手にとって怖くないでしょうから、相手が嫌がる時間を長くしたいと思います。そして、いまは相手にとってどういう時間かを同時に賢く考えながら、90分を通してサッカーをプレーする部分を披露できれば、勝機は出てくるのかなと思っています」

 だからといって、ことがその通りに運ぶわけではない。好調ではあるが、引き締めることも同時に忘れさせないのが、フィッカデンティ監督の仕事。

「川崎は前回の対戦では圧倒的な強さを持っていました。では今回はどうかと言うと、対策をされた上でまた勝ち続けているのですから、前回よりもはるかに強くなったんだということです。前回勝ったから、同じ位置づけで戦えば勝てるだろうと選手は思ってはいませんが、改めてそういった見方を私の方で分析して伝えなければなりません。そして、あくまで予測に基づいて準備するけれども、予測してないこと、さらにこんなこともやってくるのかということが起きても、対応を考えられるベースを落とし込んで試合に臨みたいと思います」

 あらゆる状況に対応すること。自分たちの良さを出して相手を嫌がらせること。前に出てボールを奪うこと。そんな勝利へのプロットは見えている。果たして、川崎F戦2度目の勝利はなるのか、楽しみしかない。