FC東京の矢島輝一はガンバ大阪との試合の終盤に登場し、あわやのシーンを生み出した。今シーズンはここまで、なかなか試合に絡めなかったが、前節の湘南ベルマーレ戦に続き、2試合連続の途中出場を果たした。大型FWが存在感を示しつつある。

上写真=ゲーム終盤に登場し、ゴール前で存在感を示した矢島輝一(写真◎J.LEAGUE)

■2020年10月10日 J1リーグ第21節(観衆8,166人/@味の素)
FC東京 0-1 G大阪
得点:(G)アデミウソン

FWはゴールを挙げないといけない

 入場制限が緩和されて、あいにく雨の中にもかかわらず、G大阪戦では8000人を超えるファン・サポーターが集まっていた。FC東京が1点を追いかける試合終了間際のことだった。スタンドが、大きくどよめいた。マスクをしてても思わず声を出させてしまうプレーを見せたのが、矢島だった。

 90+4分、右サイドから森重真人が上げたクロスに対し、アダイウトンがボックス手前で相手ボランチの山本悠樹と競り合う。ボールは後方にこぼれ、ボックス内で構えていた矢島につながった。前節の湘南戦に続き、今季2度目の途中出場を果たしていたストライカーは、右足をボールを軽く触り、その勢いを凝らすと、体勢を倒しながら右に反転。左足でボールをとらえた。

 流れるような動作から放たれたシュートに、相手GK東口順昭も虚を突かれたはずだが、コースがやや正面だったためにキャッチされてしまった。

「僕が(ピッチに)入ったということでクロスが上がってくるという状況が増えました。ピッチコンディションも含めて、何かこぼれるだろうと思っていて、あの場面はアダイウトン選手が前でつぶれてくれて、僕のところに転がってきた。ただ、あれを一発で決められる選手にならないといけない。シュートを打つというところまでいけたのは、今まで積んできたトレーニングの成果だと思いますけど、あれをゴールにしないといけない。またさらにレベルアップしていきたいと思います」

 終盤に訪れた最大のチャンスだった。
 
「起点になるところを求められて今日は試合に出たと思います。でも、やっぱり最低でも同点にしないといけなかった。他のプレーが良くてもFWはゴールしないといけないと思う。あの一本がゴールに刺さっていればよかったですけど、まだまだ努力が必要だなと思いました」

 この日のプレー時間は7分だった。その限られた時間の中で、何をすべきか、何を求められているか、矢島自身もよく分かっている。ゴールこそが、自身の道を切りひらく。

「僕がここまでの間、試合に絡めてなかった理由の一つとしては、長い距離を走ってハイスピードでゴールまで入っていくというところが足りていなかったからだと思っています。そのことへのアプローチも当然、できることはしてきました。ただ、自分自身の強みをどれだけ出せるかが大事だなと、いま改めて思っています。高さや強さ、ゴール前での駆け引きというのを(長澤)徹さんの方でずっとトレーニングしてきました」

 遠征に帯同できない、いわゆる居残り組に入り、長く試合に絡めない日々が続いていた。だが、長澤コーチのもとで腐らず、地道に積み上げてきた。それが今、少しずつ成果となって表れ始めている。自主トレーニングも欠かさず、フィジカルトレーニングをしっかりこなして、体は以前よりも格段にたくましくなった。

「周りからは太ったと言われますけど(苦笑)、トレーナーの方と二人三脚というか、試合がない分、コンディションも落ちがちなんで、そこをどれだけ筋トレとフィジカルトレーニングを自主的にやって保てるか。いざ呼ばれたときに、試合で動ける体にしておくかが大切だと思っていたので。目に見える結果というか、体もでかくなりましたし、この期間でパワーアップしているんじゃないかなと思います」

 自身の力を証明する準備を整えてきた。2試合連続の出場は、指揮官に評価されている証拠だろう。

「連戦で練習試合がなかった中で、練習と試合ではやっぱり競り合いも全然違います。一つ一つの間合いだったり、周りの景色だったり、というのがやっぱり違う。ただ、僕の中では調整は終了しました。試合勘はまったく問題ないですし、あとはどれだけ自分のスタイルをこのチームのスタイルにすり合わせて輝けるか」

 若手が次々に出番を得る中で、ようやく巡ってきたチャンス。この機を、逃すわけにはいかない。