ガンバ大阪が2001年7月以来、19年ぶりに味の素スタジアムでFC東京に勝利した。決勝点をスコアしたのは、FWアデミウソンだ。自らのプレーで得たPKを冷静に決めてみせたが、本人は「誰が蹴ってもよかった」とキッカーを務めた理由を明かした。

上写真=決勝点を決めたアデミウソン。激しい雨の中、全力でプレーした(写真◎J.LEAGUE)

■2020年10月10日 J1リーグ第21節(観衆8,166人/@味の素)
FC東京 0-1 G大阪
得点:(G)アデミウソン

 ロングボールと強力な外国籍アタッカーの馬力によってFC東京がペースを握りつつある時間だった。井手口陽介がアルトゥール・シルバに倒されたFKの場面。宇佐美貴史が敵陣やや左寄りの位置からボックス内にふわりとしたボールを入れると、相手CB森重真人に一度はヘディングで跳ね返された。

 しかし、ボックス右外にいた井手口がすぐさま反応して、仕切り直しとばかりにダイレクトでボールを送る。ファーサイドで待っていたアデミウソンが相手MF三田啓貴の背後でジャンプしてヘディングすると、ボールは振り上げた三田の右腕に当たった。

 近い位置で見ていた東城穣主審は迷わずPKの判定を下す。そのPKのキッカーを務めたのが、アデミウソンだった。静かにボールをセットする、力むことなくボールを右隅に蹴り込んだ(41分)。

「チームでPKは僕自身もよく蹴るし、ガンバではパトリック選手や宇佐美(貴史)選手、倉田(秋)選手もみんなキッカーを務められます。あの場面はFKからの流れでしたが、一番自信を持って蹴ることのできるキッカーが行くことになっています。あのときは僕自身も決める自信があったので、行かせてもらいました。ただ、パトリック選手や宇佐美選手が蹴りたいと言ってきたら、もめることもなく、自分も譲るつもりでいました。今回は流れ的に僕が蹴ることになりました」

 我を出すことなく、チームの勝利を優先する謙虚なアタッカーは言った。この日は流れがあり、自信があったからキッカーを務めたに過ぎないという。今季2回目のPKによる得点だったが、ボールをセットしてから蹴り込むまで、実に自然で、冷静だった。

 その後もアデミウソンはボックス内へ何度も走り込み、2点目を目指してプレーした。結局、ゴールを生むことはできなかったものの、75分に途中交代するまで自身の役割を全うした。その甲斐あって、チームは味の素スタジアムで19年ぶりの勝利を手にする。貴重な勝利に、アデミウソンは大きく貢献したと言っていい。

 これでチームは6連勝。まさに絶好調。この先さらに連勝を続けていくためには何が必要なのか。ガンバの攻撃をけん引するナンバー9は言った。

「どのゲームであっても、まず自分たちのパワーを出すことが重要です。今はスタメンで出ている選手、リザーブの選手、すべての選手がチームのために、勝利のためにプレーしたいという意欲が高まっている。途中から試合に出る選手がゴールを挙げることも多いですが、それはみんなの力が一つになっている結果です。そうした雰囲気を今後も続けていくことが、大事だと思います」

 常にチームファースト貫くアデミウソン。一丸となって進むチームに、その存在は欠かせない。

取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE