10月10日、明治安田生命J1リーグ第21節が開催された。味の素スタジアムではFC東京とガンバ大阪が対戦。雨でピッチが水を含み、ボールが止まってしまう難しいピッチコンディションの中、G大阪がPKによる1点でFC東京を下した。

上写真=難敵を下し、6連勝を飾って喜ぶガンバ大阪の選手たち(写真◎J.LEAGUE)

■2020年10月10日 J1リーグ第21節(観衆8,166人/@味の素)
FC東京 0-1 G大阪
得点:(G)アデミウソン

・FC東京メンバー◎GK林彰洋、DF中村帆高(63分:中村拓海)、森重真人、ジョアン・オマリ、小川諒也、MF三田啓貴(63分:田川亨介)、安部柊斗、アルトゥール・シルバ(75分:高萩洋次郎)、FWアダイウトン、レアンドロ、ディエゴ・オリヴェイラ(83分:矢島輝一)

・G大阪メンバー◎GK東口順昭、DF高尾瑠、昌子源、キム・ヨングォン、福田湧矢、MF宇佐美貴史(75分:小野瀬康介)、山本悠樹、井手口陽介、倉田秋、FWパトリック、アデミウソン(75分:渡邉千真)

やりたいサッカーを表現せずに戦った

 雨で濡れた重たいピッチでどう戦うか。ところどころで水たまりが出来て、ボールが止まってしまうという難しいピッチコンディションにいかに適応していくか。『重馬場』対応が、このゲームの勝敗を分ける一つのポイントになった。

 パスが止まり、ドリブルでもスピードを出せない。したがってロングボールと浮き球パスを多用し、セカンドボールを奪い合うようなて、やや大味な展開になった。

 序盤は、ガンバ大阪が前線のターゲットであるパトリックにボールを集め、素早いフォローでセカンドボールを回収。FC東京を押し込んだ。長いボールを使いながらも選手間の距離感が良く、ピッチコンディションとうまくつき合っていく。しかし、FC東京も時間緒経過とともに状況をつかみ、浮き球パスを利用しながら攻めこんでいった。

 さすがにパス成功率は低くなったが、それでも互いにできることを愚直にやり続けた。前半終了間際の41分、ようやく均衡が破れる。G大阪のセットプレーの流れからだった。井手口が倒されて得た直接FKの場面。宇佐美がゴール前に送ったボールはいったんクリアされるが、その跳ね返りを井手口が拾ってボックスすぐ右からダイレクトで入れ直した。ファーサイドで待っていたアデミウソンがヘディング。そのボールが三田の腕に当たり、G大阪がPKを獲得した。

 このPKをアデミウソンが冷静に決めて、G大阪が先制。前半はそのまま1-0で終了した。迎えた後半も、前半と同様のゲーム展開が続く。長いボールと浮き球と、セカンドボールの回収を軸に両チームとも攻撃を仕掛けていく。FC東京は前線の3トップは右アダイウトン、中央レアンドロ、左ディエゴ・オリヴェイラという並びから右レアンドロ、中央ディエゴ・オリヴェイラ、左アダイウトンに変えるなどして、攻撃に厚みを加えていった。だが、G大阪も集中力を切らさず、昌子、東口を中心に割り切った守備で対応し続けた。

 互いに選手を交代させながら、カウンターを打ち合ったものの、スコアは動かず。1-0のままゲームは終了した。

「今日に関しては相手のボックスにボールを入れていくというところで、どちらかというと通常をわれわれがやりたいサッカーは割り切って表現せずに、相手のディフェンスラインの背後とボールが止まるであろうところを考え、選手には伝えました。
 ミーティングの冒頭の言葉がまさに、割り切るという言葉だったので、それは選手がピッチでやってくれたと思います」

 実際、PKにつながる1点はセットプレーの流れからだったが、井手口が跳ね返されたボールを間髪入れずにボックス内に入れたことがきっかけになっていた。狙いは、実ったという見方もできる。

 勝利をつかんだG大阪の宮本恒靖監督は徹頭徹尾、状況に合わせて戦う抜いた選手たちを称賛した。G大阪が味の素スタジアムでFC東京にリーグ戦で勝ったのは2001年7月14日以来のこと。その試合では宮本監督は現役選手としてピッチに立っていたが、「そういう質問を受けてそんなに勝ってなかったのかと初めて気がついたくらい。いろいろ人が変わる中でそういったことがあったと。ただ今日、みんなの頑張りで勝ち切れたのはクラブとして良かったことだと感じています」と、鬼門を突破したことに関してもやはり、選手を称賛した。

 2位FC東京を破り、これでチームは6連勝。敵地味スタでの19年ぶりの勝利は、さらなる上位へ大きなステップになった。

現地取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE