横浜F・マリノスは柏レイソルに敗れ、ルヴァンカップ決勝に進めなかった。相手を圧倒しながら勝ち切れなかった試合後、キャプテンの喜田拓也は悔しさを口にする一方で、力強く前を向いた。それはなぜか?

上写真=悔しい敗戦となったが、喜田拓也は前を向き、力強い言葉を口にした(写真◎Getty Images)

■2020年10月7日 JリーグYBCルヴァンカップ準決勝(観衆4,785人/@ニッパツ)
横浜FM 0-1 柏
得点:(柏)山下達也

このスタイルに常に喜びを感じている

「自分たちがほぼ押し込んでいる状態で90分が進み、相手のセットプレーで失点という形でした。自分たちは勝つためにこのスタイル、このサッカーをやっています。そこに対するみんなの姿勢や最後まで戦い切る姿勢は出ていた。その点についてはチームを誇りに思います。ただ結果については、勝ち切れなかったので悔しい。それ以外の何ものでもありません」

 攻めに攻めながら、横浜FMは決勝に駒を進めることができなかった。ゲームの主導権を握り、狙い通りにゴールに迫った。だが、相手のGKキム・スンギュの好守に何度も遭って、ただの1度もネットを揺らすことができなった。これもサッカーを言ってしまえばそれまでだが、あれだけチャンスを作りながら、勝利を手にできない事実は受け入れがたいものがあるだろう。

 それでも横浜FMのキャプテン、喜田拓也は敗戦の中、しっかり次につながるもの、つなげるべきものを見ていた。

「今日、負けはしましたが、こうした舞台でも自分たちのやるべきことをやり通すところにチームの意志を感じました。このチームで、このスタイル、このサッカーをできるところに、僕自身は常に喜びを感じています。負けたからといってそれが変わることはありません。タイトルを逃した点について、悔しいね、残念だったね、一つタイトルが消えてしまったね、で終わらず、2018年の決勝で敗れた悔しさに、また上乗せして、今日の悔しさも持って今日からタイトルを獲り返すべく始めたいとと思います。チームメイトもその思いは一緒だと思う。この悔しさを忘れることはないし、みんなともっと強くなっていきたい」

 いま進んでいる道は、必ずタイトルに続いている。その信念には一点の曇りもない。そうでなければ、これほど真っすぐな言葉を敗戦直後に口にできないだろう。

 扇原貴宏(ボランチ)が状況を見ながら中盤と最終ラインを自在に行き来するスタイルは、この柏戦の前の試合、神戸戦でも効果を発揮していた。同試合も競り負けることになったが、いくつものチャンスを創出し、ゲームを支配した。成熟すれば、横浜FMはさらなる高みへと到達できるかもしれない。「自分たちがやりたいことを出せる時間とか回数は手応えはあります。ただ、それをいかに結果に結びつけていくか。その点はもっと上げなければいけない」と喜田は言った。

 圧倒しながら敗れた神戸戦、そして柏戦は横浜FMが新しいフェーズに向かいつつあることの証明か。

「悔しさを次につなげられるかどうかは、自分たちの姿勢や取り組み次第。そこは気持ちを強く持って、みんながチーム強くしていくという意志を持つことが重要だと思います」

 目指す先は、はるか高み。この悔しさを無駄にはしない。