JリーグYBCルヴァンカップ準決勝で川崎フロンターレを破ったFC東京が意気軒昂だ。この勢いをリーグ戦に持ち込むが、ビッグマッチのあとのメンタル面が気になるところ。最後尾から鼓舞する林彰洋は、強い気持ちで戦うと誓う。

上写真=川崎Fにしぶとく勝ったあとの試合。大事にしたいと語る(写真◎FC東京)

「健太さんはさすがだな」

 FC東京は最近、非常に興味深い勝ち方をしている。

 9月30日、J1第29節の浦和レッズ戦で手にした1-0の勝利は、埼玉スタジアムで17年ぶりという歴史的な白星だった。10月4日の第20節湘南ベルマーレ戦ではその浦和戦から先発メンバーをすべて入れ替え、2人を交代でJ1デビューさせるなど経験の少ない選手を起用する大胆策で挑み、またも1-0で勝利を収めた。そして中2日で迎えた10月7日のルヴァンカップ準決勝、川崎フロンターレ戦では、徹底した守備戦術で2-0。選手のやりくりも苦しい状況で戦った3試合ですべて完封勝利と、最高の結果を残しているのだ。

「川崎F相手の準決勝」という舞台設定が一つの大きな目標になり、集中力が高まっていった成果でもあるが、この流れを作ったのは長谷川健太監督のマネジメント能力だと、GK林彰洋は感じていた。

「健太さんはさすがだな、と思わされました。ああやってメンバーを変えて結果を残すというのは、並大抵ではない。いつも出られない選手の気持ちをマネジメントする能力があると思います。もちろん、結果が残っているからこそ言えることですけど、士気を高く保って続けるのは難しいこと。出られない選手が腐っちゃうような状況だと、今年はなかなか結果は残りません。でも、そういう状況で結果が残っているのは、監督のマネジメント能力があるからだと思っています」

 ルヴァンカップ準決勝に出場したメンバーの大半は、その前の湘南戦でベンチにも入っていない。林もその一人だった。

「ベンチに入るとアップをしたり気持ちの部分の準備で、疲労感は多少なりとも残るものです。監督の意思の中で、しっかり休ませて川崎戦に臨ませてあげたいと思ったのかな。そういう中で湘南戦で結果を残せたのは、僕らの全体のレベルアップがはかれたのではないかと思っています」

 そして、その運命の川崎F戦。

「リーグ戦で大敗を喫した(第3節●0-4)ので、対川崎布陣でやらなければということで、(長谷川健太)監督も守備のやり方を細かく話していたことが、この流れ、内容、結果についてきたと思います」

「前回の対戦では、前から奪いに行ってすかされるというか、同じ人数をかけていってもかわされるシーンがあったので、相手が攻めてくる状況でいかにコンパクトにしてスペースを与えないかを意識するということが今回の課題でした。もちろんチャンスがあれば前から追うのは自分たちのストロングポイントでもありますが、ただ前回の対戦や、または他の(川崎Fの)試合を見ていてもすかされてゴール前に人がいなくて、ということが多いので、割り切りという意味でゴール前を固めました」

 最終ラインを低く保ち、中盤のラインもそこに近づけて、FWまでもが加勢する。一発勝負に勝ち抜くための戦い。限りなくプロフェッショナルに徹した90分だった。

 その結果、見事な2-0の勝利で11年ぶりの決勝進出を決めたのだが、気になるのがその後のこと。大一番のあとは、高めた集中力が空気の抜けた風船のようにしぼんでしまわないかが心配だ。

「健太さんも言っていましたけど、ビッグマッチの次は気が抜けたり疲労感が残りがちなので、次のガンバ戦に意識をもっていかなければいけないと思います。より強い気持ちで臨まなければ。順位を見ても、ガンバは自分たちより試合数が少ないけれど4位につけていて、この試合は2位と4位の戦いなので、しっかり勝ちきれるか負けるかで大きな差になっていくでしょう。今後を占う一戦になると思います」

 4試合連続無失点勝利へ。守護神の準備はできている。