10月7日、JリーグYBCルヴァンカップ準決勝2試合が開催された。ニッパツ三ツ沢球技場では横浜F・マリノスと柏レイソルが対戦。前半にコーナーキックから挙げた1点をGKキム・スンギュ中心に守り抜いた柏が横浜FMを下し、7年ぶりの決勝進出を決めた。

上写真=勝利の瞬間、好セーブを連発してゴールを守り抜き、勝利に貢献したGKキム・スンギュに仲間が駆け寄った(写真◎J.LEAGUE)

■2020年10月7日 JリーグYBCルヴァンカップ準決勝第(観衆4,785人/@ニッパツ)
横浜FM 0-1 柏
得点:(柏)山下達也

・横浜FMメンバー◎GK梶川裕嗣、DF小池龍太、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、ティーラトン、MF喜田拓也、扇原貴宏(73分:エジガル・ジュニオ)、渡辺皓太(63分:天野純)、FW前田大然(73分:オナイウ阿道)、エリキ、マルコス・ジュニオール(83分:水沼宏太)

・柏メンバー◎GKキム・スンギュ、DF北爪健吾、山下達也(79分:川口尚紀)、大南拓磨、古賀太陽、三丸拡(88分:高橋峻希)、MF大谷秀和(79分:三原雅俊)、ヒシャルジソン、江坂任(88分:仲間隼斗)、FWクリスティアーノ、オルンガ

狙い通りの勝利を手にできた(ネルシーニョ監督)

 雨中の決戦は、柏に軍配が上がった。開始直後の11分。まだ互いの出方を探り合っている時間帯に、柏が左コーナーキックのチャンスを得る。クリスティアーノが蹴ったボールにCB山下が飛び込み、豪快なヘッドで先制ゴールを記録した。

 この得点を機に、試合は「握って攻める」横浜FMと「守って速攻を繰り出す」柏という様相を呈していく。横浜FMは喜田、扇原、渡辺の3ボランチを中心にボールを握って攻撃を展開。左右にボールを配ってクロスから何度もシュートチャンスを手にした。一方の柏は3バックに両ウイングバックを加えた5人で最終ラインを形成し、その前には2ボランチ+2シャドーの4人のラインをセット。5+4のブロックで横浜FMの攻撃を跳ね返していった。

 特筆すべきは柏の集中力だ。ボールを握って左右の揺さぶりをかけてくる相手に対して素早いスライドで穴を開けることがない。ブロック内でパスをつながれても粘り強く食らいつき、危険地域で相手を自由にしなかった。それでも打たれたシュートについては、ゴール前で守護神が立ちはだかった。

 守備に奔走した柏の選手たちにさすがに疲れが見え始めた残り15分から、GKキム・スンギュが獅子奮迅の活躍を見せる。76分にはティーラトンに右サイドを縦に突破され、クロスからエリキにフリーでヘディングを許した。コースは甘かったが、抜群の反応で防いでみせると、83分にはエジガル・ジュニオの強烈なシュートを右手一本で防ぐ。88分にもオナイウ阿道のヘッドも鋭い反応で枠の外へと弾き出した。

 分厚い守備ブロックの後方で仁王立ちするキム・スンギュ。当たりに当たっているGKの前に、横浜FMは沈黙するしかなく、その神がかったプレーには敵将ポステコグルーも脱帽するより他なかった。

 最後まで山下が挙げた得点を守り切った柏は、2013年以来、7年ぶりに決勝を進出を決めた。チャンスの数は横浜FMがまさる。シュート数は20本対6本だった。それでも勝ったのは、柏だ。リーグ戦でマンツーマンぎみに守って守り切れず、1-3で敗れた教訓を生かして、この日はブロックをセットして相手の攻撃を封じた。

「今日の狙いとしてはカウンターがあった。相手はポゼッションに非常に長けた、クオリティーの高いチームだが、ボールを奪ったときに相手の背後にできるスぺースを狙っていこうと臨んだ。そのことは今週、何度も選手と話し合いを重ね、狙いを持って試合に臨むと確認していた。チームの出来は非常に良かったし、堅い守備、2列目のスライドもしっかりやれたと思う。いい形で試合を運ぶことでき、狙い通りの勝利を手にできた」

 敗戦から学び、今回は横浜FMにリベンジを果たした。直前のリーグ戦で江坂任を休ませ、大谷を途中出場に留めてコンディションを調整し、守り方に関しては前回対戦の反省をきっちり生かした。準備の仕方という点で、今回は柏に分があったのかもしれない。

「今、チームは非常にいい雰囲気にあります」

 試合後、会心の笑顔でゲームを振り返った大谷キャプテンの言葉は印象的だった。2013年、最後に柏はが聖杯を手にしたとき、チームを率いていたのものネルシーニョ監督だ。タイトルの味を知り、その取り方を知る智将の手腕と、その狙いをピッチでやり抜く柏の選手たちの力を示した勝利だった。

現地取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE