10月4日、明治安田生命J1リーグ第20節が開催された。ニッパツ三ツ沢球技場では横浜F・マリノスとヴィッセル神戸が対戦し、敵地に乗り込んだ神戸が3点ゴールを挙げて勝利。横浜FMも多くのチャンスを創出したが、あと一歩及ばなかった。

上写真=同点ゴールを挙げたドウグラス。西のスルーパスに反応して裏に抜け出し、冷静に決めた(写真◎J.LEAGUE)

■2020年10月4日 J1リーグ第20節(@ニッパツ/観衆7,279人)
横浜FM 2-3 神戸
得点:(横)エジガル・ジュニオ、小池龍太
   (神)ドウグラス、アンドレス・イニエスタ、古橋亨梧

・横浜FMメンバー◎GK梶川裕嗣、DF小池龍太、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、ティーラトン、MF扇原貴宏、渡辺皓太(85分:水沼宏太)、和田拓也(85分:大津祐樹)、FWエリキ(64分:ジュニオール・サントス)、エジガル・ジュニオ(64分:前田大然)、マルコス・ジュニオール(64分:オナイウ阿道)

・神戸メンバー◎GK前川黛也、DFダンクレー、セルジ・サンペール(46分:安井拓也)、トーマス・フェルマーレン、MF西大伍(86分:菊池流帆)、郷家友太(73分:小川慶治朗)、山口蛍、アンドレス・イニエスタ、酒井高徳、FW古橋亨梧、ドウグラス(90+2分:藤本憲明)

シュート数は横浜FMが26本、神戸はわずか3本

 クロスの雨とラインブレイク。前者は横浜FMが、後者は神戸が前半に三ツ沢のピッチで表現したプレーだ。先制したのは、左右から大量の『雨』を降らせた横浜FMだった。狙い通りクロスをうまくゴールに結びつけてみせる。開始3分、右ウイングバックの小池のクロスをエジガル・ジュニオが右足ボレーで決めた。

 その5分後。今度は神戸がネットを揺らす。横浜FMのハイラインをものの見事に破った。オフサイドライン上で相手DFと駆け引きしていたドウグラスが西のスルーパスに反応。絶妙のタイミングで裏に抜け出して同点ゴールをスコアした。

 さらに3分後、イニエスタのサイドチェンジを西がダイレクトでボックス内に折り返すと、ボールを受けようとした郷家がエリア内で転倒。扇原に倒されてPKを獲得した。扇原は出した足を止めていたようにも見えたが、判定は覆らず。イニエスタがこのPKを沈めて神戸が逆転に成功した。

 開始から11分で3点が入り、試合は派手な打ち合いになるとも思われた。だが、その後はスコアが動かず、時間が経過していく。横浜FMは変わらずに右から左からクロスの雨を降らせたものの、神戸も変わらずCBダンクレーとフェルマーレンが跳ね返し続けた。

 後半に入ると、神戸は相手3トップの両翼、マルコス・ジュニオールとエリキに、アンカー・サンペールの両脇をいいように使われていたことを踏まえて守備の修正を施す。サンペールに代えて安井を投入。山口とドイスボランチを組ませ、さらに古橋と郷家をやや下げて守備面のバランスを整えた。

 一方の横浜FMも扇原が機に応じて最終ラインと中盤の底を行き来しつつ攻撃を組み立てて攻勢を強めた。しかし、バランスを修正した神戸の守備を破れない。結果、次の1点も神戸が手にすることになった。56分、カウンターを発動して古橋が左サイドからドリブルでカットイン。ボックス手前から右足を振り抜き、豪快にネットを揺らした。

 リードを2点に広げた神戸はその後、横浜FMの猛攻に遭うも集中力を切らさずにきっちりと跳ね返していく。アディショナルタイムに小池にゴールを許したものの、反撃を1点に抑えて、敵地で勝利をつかみ取った。

「勝てはしましたが非常に課題の残った試合になりました。前半は良い得点もありましたが、マリノスがゲームをコントロールして、ビッグチャンスもたくさんあった。ただ、前半はボールを持たれましたけど、後半はメンバー変更することによって、持たせた。ここの違いは少し大きいのかなと思います。もっともっといい内容のゲームができるようにトレーニングをしていきたい」

 三浦淳寛監督は、こう試合を振り返った。シュート数は横浜FMの26本に対し、わずか3本。それでも3得点を挙げて勝利を飾ったのは、狙いと割り切りがあればこそだろう。

「デュエルはやるかやらないか。やれば当然、勝利に近づく。そのことは選手に植え付けています。僕は良いのか悪いのか、しつこい性格で何度も何度も選手とコミュニケーションを取っている。点を取ることよりも、失点のところがどうしても気になっていた。なので今、そこに手をつけています。当然、我々のやりたいサッカーは明確にあるんですが、ただ守備も攻撃も一気に改善できるような監督としての能力が現時点では僕にないので、とにかく今、チームが勝ち星を得るために必要なことにトライしています」

 三浦監督の就任以来、負けなしの3連勝。とくに守備面の改善が顕著だ。集中した守りが、3つ重ねた勝利のベースになっている。そしてこの日も、好機の数もシュートの数も横浜FMがまさっていたが、勝ち点3を手にしたのはボックス内で集中を切らさず、守備のバランスを保った神戸の方だった。

現地取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE