横浜FCを3-0で破った柏レイソルで破格の活躍を披露したのは2ゴールのオルンガだか、2アシストの川口尚紀もそれに比肩する活躍するを見せた。本人は決めた人のおかげと謙遜するが、勝利に直結する重要な仕事ぶりだった。

上写真=右サイドで起点となって2アシストをマークした川口尚紀(写真◎J.LEAGUE)

■2020年10月3日 J1リーグ第20節(観衆4,571人/@ニッパツ)
横浜FC 0-3 柏
得点:(柏)オルンガ2、大谷秀和

オルンガのリーチを生かしたクロス

 右サイドからいくつもチャンスを創出した。そのうち一つは追加点を生み、もう一つはダメ押し点につながった。川口にとってはまさしく狙い通りのプレーだっただろう。

 横浜FCの左サイドにはサイドハーフの松尾佑介と、サイドバックの袴田裕太郎がいたが、川口はクリスティアーノ(途中からは呉屋大翔)と連係しながら巧みな位置取りでフリーになって、ボールを送り込んでいる。

 チームの2点目になったオルンガのゴールは、時間の創出と配球の質がポイントだった。

 GKキム・スンギュのゴールキックは敵陣に入ったところでクリアされたが、そのこぼれ球を北爪健吾がダイレクトで右のライン際にポジションを取っていた川口に出した。北爪がダイレクトでパスを出したことで、相手の対応が遅れ、川口はフリーのまま次のプレーを選択する時間を手にした。

 このとき、相手の左サイドバック・袴田を引っ張るように呉屋が右サイドの裏のスペースへ走って注意を引き、そしてオルンガは相手の2CB、小林祐希と伊野波雅彦との間を狙って走り出した。

 フリーでボールを持った川口は、右足でオルンガが走るコースに合わせて浮き球のクロスを送る。やや球足は長かったが、受け手のリーチを考えれば、問題はなかった。オルンガは背中越しに届いたそのボールを走りながら伸ばした左足でコントロール。マークに付く2CBをあざわらうかのように収めて、すぐさまシュートを放ち、見事にネットを揺らした。

「(アシストは)どっちも決めた人がうまかった。ミカ(オルンガ)のゴールに関して、前半からずっと相手の背後というのを狙っていてくれたけど、うまく僕たちが配球できなかった。その中で1つ良い形でゴールに結びつけていたかなと思います」

 川口が振り返った通り、確かにオルンガのコントロールは見事だったが、ゴールを生み出す過程でチームが連動し、川口がオルンガを生かすボールを届けたのも事実だろう。

 そして、アディショナルタイム。今度は大谷秀和によるダメ押しゴールを川口は演出した。左CKの流れからだった。攻撃を作り直さんとボールをつなぐ中で、大南拓磨からボールを受けると、ダイレクトでボックス内へクロスを送った。攻め残っていた大谷がフリーであるのを、川口は見逃さなかった。

「タニさん(大谷)のはシンプルにタニさんのがうまかったです」
 そう川口は振り返ったが、ダイレクトでクロスを上げるという選択。そして緩やかなカーブを描いた球質。相手最終ラインの間を取ってフリーになっていた大谷にドンピシャで届ける正確な技術。きっちりサイドネットにヘッドでボールを叩き込んだ大谷のプレーも素晴らしいものだったが、狂いのない選択とプレーでゴールを演出した川口もまた、素晴らしかった。

 攻撃面で出色のプレーを披露した川口はしかし、守備面について反省を口にしている。

「前半から後半にかけて自分たちのポジションを変えたりして、うまく対応しようとしたんですけど、相手のレアンドロ・ドミンゲスのところで自由にやられてしまった。もう少し中を閉めたり連動して動くというところは向上していかないと。人を捕まえるという作業が、ちょっと後手後手になってしまったと思います」

 3-0の勝利でも、課題をしっかり見つめる。いま、柏というチームが成長し、川口が向上し続けている理由だろう。

取材◎佐藤 景