FC東京は前節のサガン鳥栖戦で0-3と大敗。9月30日の浦和戦は、チームの立て直しを図る上で重要な一戦だった。上位戦線に踏みとどまるためにも連敗は何としても避けたい。その状況で大きな仕事を果たしたのが永井謙佑だった。

上写真=値千金のゴールを決めた永井謙佑が拳を掲げる(写真◎Getty Images)

■2020年9月30日 J1リーグ第29節(@埼スタ/観衆5,623人)
浦和 0-1 FC東京
得点:(F)永井謙佑

「あたり損ないが僕のところにきた」(永井)

 ただ速いだけではない。FC東京の永井謙佑は、緩急をつけた動きで浦和の守備陣を翻弄した。ギアの切り替えが巧みだった。ローギアでフォアチェックに行ったかと思えば、一気にトップギアに上げてプレス。相手のビルドアップのミスを誘い、流れを引き寄せていた。裏に飛び出すタイミングも絶妙である。オフサイドラインぎりぎりで飛び出していく。

 地道にコツコツと仕事をしていると、ご褒美のように好機でボールが回ってくるものだ。37分、相手のクリアミスを拾ったレアンドロのシュートが、まるでパスのように足元へぴたりとつく。

「あたり損ないが僕のところにきた」

 苦笑しながらも、その運をしっかりつかむ。素早くシュートに持ち込み、一度はGKにセーブされながらも、落ち着いてニアサイドの上へ蹴り込んだ。31歳になっても、フォワードとして生き残っている由縁だろう。

 この1点が決勝ゴールとなり、チームは連敗を阻止。完封負けした前節のサガン鳥栖戦からの嫌な流れを断ち切る一発でもあった。
「チームが苦しいときに、自分のゴールで勝ててよかった」

 柔和な表情には充実感がにじんだ。今季は2点目。終盤戦に向けて、そろそろエンジン全開でゴールを重ねていきたいところ。フィニッシュワークの精度を高めて、さらに突き進んでいくことを誓う。

 FC東京に加入して5年目。昨季は二桁得点に一歩届かない9点どまりだった。今季こそ2015年以来の大台に乗せるために、力尽きるまで走り続けるつもりだ。まだまだ青赤のスピードスターから目が離せない。

取材◎杉園昌之