明治安田生命J1リーグで名古屋グランパスが黒星と白星を繰り返している。だが、直近の第19節清水エスパルスには3-1で快勝しているだけに、連勝必至で臨んでいく。その清水戦では山崎凌吾が久々の先発出場に燃えていた。

上写真=清水戦では貪欲にゴールに迫った。そのパワーがチームを活性化させた(写真◎J.LEAGUE)

「直輝の動き出しがすべてでした」

 山崎凌吾はたぶん、一番難しいことに向き合っている。

「自分の中で変わったことはしていないですね」

 9月26日、J1第19節清水エスパルス戦のことだ。8月19日の第11節湘南ベルマーレ戦以来、リーグ戦では今季3試合目の先発出場だった。61分間のプレーは同じく今季最長。

 交代出場で流れを変える役割が多かっただけに、先発だからこその変化を期待するが、逆なのだ。変わらない。継続する。それが山崎のやり方だ。常に自己を一定に保つほうがきっと、難しいのではないだろうか。「チームに貢献する」と何度も繰り返して口にするあたりに、変わらないことへのこだわりが見えてくる。

 その清水戦は3-1の快勝。「まずはチームが勝つことを優先して、できることをやっていきました。60分ぐらいのプレーで本当は決めたかったけれど、少しでもチームに貢献できたと思ってよかったと思います」「ゴールは狙っているのでなかなか入らないのは悔しいところですが、引き続きやっていくしかないと思います」と振り返る。

 決めたかったけれど、の最たるものは、19分のシーンだろうか。マテウスからの右CKを完璧に頭でとらえたが、GKの驚異的な反応でかき出されてしまった。ゴールまであと3メートルといったところだった。

 ただ、チームに貢献できたと胸を張るプレーの一つは、25分のチーム2点目のアシストだ。右サイドから成瀬竣平のパスに対して、相手を背負いながら遠い方の右足でトラップ、体勢を崩して倒れかけるのだがすぐに立ち上がると、左足で中央へスルーパス。逆から入ってきた前田直輝にドンピシャリで、前田はGKをかわして無人のゴールに流し込んだ。背後からの相手のチャージの力をうまく利用しながら、自分の体を軸にしてターンする巧みな身体操作は、この男の真骨頂だ。

「成瀬から遠い方の右足に来ると思って、ターンのイメージはありました」と準備万端だったからこその素早いリカバーだった。そして「直輝が斜めに素晴らしい動き出しをしてくれたので、僕のパスと感覚的に合った感じです。直輝の動き出しがすべてでした」とまず何よりも仲間を称える。

 次節はヴィッセル神戸とのアウェーゲーム。山崎は「神戸のピッチは滑る印象があるので、注意深くやらないと」と話す。「頭の中で滑るかどうか分かっているだけでも、勝ち点3につながっていくと思います」という意識こそ、どんな小さなことに対しても手を抜かないことの象徴だろう。

 それもまた、山崎の「変わらないことへの挑戦」の一つなのだ。