上写真=その快足は横浜FMの攻撃の幅を広げ、相手にはただただ脅威になる(写真◎J.LEAGUE)
■2020年9月27日 J1リーグ第19節(@三協F柏:観衆2,715人)
柏 1-3 横浜FM
得点:(柏)オルンガ
(横)エリキ、オウンゴール、前田大然
「流し込むだけでした」
横浜F・マリノスのアンジェ・ポステコグルー監督は、柏レイソル相手の逆転勝利に大きな満足を示した。
「素晴らしいゲーム内容で試合を終わらせることができました。前半はタイトで、チャンスを作りながら点に結びつきませんでしたが、後半は強くスタートして前方向に進もうということでチャンスが結果として結びつきました。アグレッシブにプレーできましたし、選手は素晴らしいパフォーマンスを披露してくれました」
逆転勝利の理由を聞かれて二つ返事で口にしたのが「Strong Mentality」という言葉だった。強い気持ち。
「強いメンタリティーで最後の最後まで戦ってくれた結果です。セットプレーから久々に失点してしまいましたが、そのあとも落ち着いてできました。もっともっと取れるチャンスを作りながらできて、いい内容で終わることできました」
心が体を動かす好例だが、もう一つキーになったのが「前方向」だろう。後半開始の時点で仲川輝人を前線に、中盤には扇原貴宏を組み込んで、好調を続けるエリキやこの仲川の走力と扇原の縦への強気なパスで推進力を高めた。それをさらにパワーアップさせたのが64分、前田大然の投入である。
超高速アタッカーが加わったことで、前への仕掛けはさらに威力を増すことになった。77分の同点ゴールは仲川が前へ仕掛けたドリブルの粘りからエリキにつないで蹴り込んだものだったし、逆転弾となった82分のオウンゴールでは小池龍太のパスからエリキが右のスペースに抜け出して折り返したボールが、突っ込んできた仲川に触らせまいとしたDFに当たって入ったものだった。
そして、前田自身も決めたのだ。中央にいた前田は左から和田拓也が中に持ち出したときにすっと相手の視界から消えるようにファーに逃げ、和田の縦パスで仲川が左に進入するのを見て、DFの間からゴール前に入ってきて、仲川のセンタリングを落ち着いてプッシュした。90+2分、勝利を決定的なものにする3点目である。
「負けていた時点で入ったので、何とかして1点を取って、それから逆転したくて入りました。ゴール以外のプレーはダメだったので、取れてよかったです」
「中に入ったらボールが来ると思ったので流し込むだけでした」
今年8月に加わって、12試合、473分に出場して2得点。「本当に少ないと思います」と本人はニコリともしないが、「チームがいい調子で来ているので、またしっかり取って勝利に貢献できればいいと思った」と振り返りはしない。
「チームが勝つために走りました。少しでもチームの力になったらなと」
言葉は少ないが、その分、チームのために戦うのだという強い意志をストレートに表明している。その魅力的な快足は、まさに一本気なハートを示しているようだ。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE